巻ノ百四十 槍に生きその三
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「よくしてくれたのじゃ」
「そうでしたか」
「裏切者と思っていましたが」
「実は違いましたか」
「そうだったとは」
「あの者も忠義者であった、親子共々な」
長曾我部は感じ入る心の中で話した。
「家が再興されたならな」
「あの者達のこともですな」
「忘れずに供養し」
「そしてですな」
「その忠義を讃えますか」
「そうしようぞ」
桑名達のことも忘れずに言ってだった、長曾我部も兵を進めた。他の大坂の将達も続いていった。
大野もそれを見て兵を出す、そこで弟達に言った。
「よいか、我等もじゃ」
「はい、出陣し」
「そのうえで戦いましょうぞ」
「そして何としても」
「豊臣家を」
「護るぞ、わしは右大臣様をお護りするが」
無論茶々もだ、大野は心から考えていた。
「しかし国松様もじゃ」
「右大臣様のお子であられる」
「あの方もですな」
「お護りせねばならん、それはじゃ」
治房を見て言うのだった。
「絶対にですな」
「せねばならぬ」
「例えどうなろうとも」
「お主にはそれを頼む」
こう言うのだった、己のすぐ下の弟に。
「よいか」
「ですがそれがしは」
「よい」
治房が何を言いたいのかはわかったいた、だが大野はそれを言えば治房が自分が頼むことを出来なくなると思い言わせなかった。言えばそれでお互いに動けなくならだ。
「それは」
「左様ですか」
「それでじゃ」
「はい、国松様をですか」
「お護りしてな」
「そうしてですか」
「生き延びよ」
例え何があろうともとだ、大野は言葉の中にこの一言も含めて治房に告げた。
「よいな」
「それでは」
「わしは右大臣様をお護りするからな」
「それがしは、ですな」
「国松様をじゃ」
「そうさせて頂きます」
「お主にも言っておく」
治胤にも言う大野だった。
「お主はわしに何があってもな」
「後をですな}
「任せる、必ず最後の最後まで戦うのじゃ」
「兄上が右大臣様をお護りし」
「お主はそうしてもらいたい」
最後の最後まで戦って欲しいというのだ。
「よいな」
「それでは」
「頼んだぞ、では右大臣様が出陣されれば」
大野は既にその手に槍を持っている、彼もまた戦く覚悟つまり秀頼の為に死ぬ覚悟は出来ているのだ。
「行くぞ」
「はい」
「それではです」
「右大臣様ご出陣と共に」
「出ましょうぞ」
治房と治胤も戦うつもりだった、彼等は兄に言われたことを忘れず戦おうとしていた。だがこの時にだった。
出陣しようとする秀頼にだ、茶々が言ったのだった。
「待たれよ」
「何でしょうか」
「また砲が来れば」
先の戦の時の恐れが蘇ってきたのだ、戦の中で。
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