巻ノ百四十 槍に生きその一
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巻ノ百四十 槍に生き
朝となった、幸村は既に飯を喰らっていた。それは彼が率いる兵達も同じで彼はその兵達に朝もやの中で言っていた。
「よいな」
「はい、これよりですな」
「戦ですな」
「幕府の本陣に突き進み」
「そのうえで」
「狙うは一つじゃ」
こう言うのだった。
「よいな」
「大御所殿の御首を」
「他のものには一切気をやらず」
「ただひたらすらですな」
「大御所殿を目指す」
「そうするのですな」
「そうじゃ」
まさにと言うのだ。
「他のものはいらぬ、そしてこの度の戦では右大臣様も出陣される」
「おお、あの方もですか」
「総大将であられるあの方も」
「そうされますか」
「遂に」
「そうじゃ、あの方も出陣されてじゃ」
そのうえでというのだ。
「戦われる」
「だからですな」
「この度の戦はですな」
「まさに決戦」
「豊臣家の存亡を賭けた」
「そういうことじゃ、豊臣家の為にな」
まさにと話す幸村だった。
「我等もじゃ」
「はい、皆死兵となり」
「そうしてですな」
「戦い」
「そして勝つのですな」
「そうする、皆命を捨てよ」
これからはじまる戦ではというのだ。
「無論拙者もじゃ、そうしてじゃ」
「大御所殿の御首を取る」
「そうしますな」
「死兵となり生きる」
「そうするのですな」
「死中に活ありじゃ」
まさにその中にというのだ。
「だからじゃ」
「はい、死兵となる」
「次の戦では」
「そうなるのですな」
「そうじゃ」
幸村の言葉は強かった。
「そうした戦じゃ」
「ではこれより」
「我等皆死兵となり」
「まさに一丸となり」
「戦いましょうぞ」
「そして必ずや」
「大御所殿の御首を」
皆で誓い合うのだった、だがここで。
幸村は大助にはだ、こう言ったのだった。
「既に妻や子、親兄弟がおる者は退けているが」
「父上、それがしは」
「お主は昨日の戦で足を怪我した」
「だからですか」
「今の戦はな」
例えそれが決戦であろうともというのだ、幸村が全てを賭けた。
「右大臣様のお傍におってな」
「右大臣様をですか」
「守ってくれ」
そうしてもらいたいというのだ。
「この度はな」
「では」
「うむ、右大臣様に何があろうともな」
例え足を怪我していてもだ、己が武芸を授けた大助ならばというのだ。
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