20話→太郎VS一夏
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遜する。
他にも様々な視線が、二人には寄せられていた。
学園の公然の最重要機密、山田太郎。
その男が、自分の肝いりとして連れてきた弟を一目見ようと、今日、この席には、多くの教員が詰めかけ、二人を観ていた。
そして、席外でも、二人を見つめる二つの視線があった。
とある深海の底を、ゆったりと進む潜水艦の中に、二人はいた。
ハッキングしたカメラからもたらされる映像を見て、一人の女性が手を叩く。
「もぉー、太郎ちゃんてば、相変わらずイッチーの事大好きなんだから。またネットにホモ疑惑ネタ流しちゃうぞ?」
ウサギのヘヤバンドをつけ、白衣を羽織る女性がそう言うと。
「止めて下さい、太郎さんに酷い事をするのは。別に弟の方はどうなっても構いませんが」
そう、もう一人の女性、いや少女が制止した。
「ふふっ、クーちゃんは相変わらず、太郎ちゃんと私の事大好きだね」
珍しく女性…………篠ノ之束は自身を諌める言葉を口にした太郎と千冬以外の言葉を、無条件で許した。
なぜなら、彼女は束が実の娘と同じように愛している、少女だからだ。
彼女の名は、クロエ・クロニクル。
流れるような銀のストレートヘアに、対照となるような金と黒で彩られる瞳が、整った容姿と相まって、神秘的な美を彼女に与えていた。
ただ…………
「束様?この映像をダビングして頂いても?」
そう口にする彼女は、太郎が真剣な顔で一夏を叩きのめす度に徐々に赤く染まり、息も荒くなっていく。
彼女はちょっと…………うん、ちょっと特殊な趣味をしていた。
自身が変人である自覚のある束は、それに少しだけ冷や汗を足らしながら、言葉を紡ぐ。
「くーちゃん、次の模擬戦でまた、ムチャな真似しないでね?」
「善処します」
「くーちゃん!?」
欠片も心もこもっていない返答に困惑するも、クロエから更に返って来たのは、割りと首肯くのに困る返答だった。
「だって、束様!太郎様は私がムチャな攻めをして手傷をおうと、手ずから手当てしてくれたり、食べたいもの作ってくれてアーンしてくれたり、ベットの中で優しくしてくれたり、良いことづくめなんですよ!」
そう力説する義娘と言うべき存在に、束にしては珍しく顔を覆って後悔していた。
「私がくーちゃんに、『太郎ちゃんは多少のワガママなら聞いてくれるからワガママなことしてみたら』と言った結果がこれか…………太郎ちゃんヘルプゥ!?」
聞こえるはずの無い叫びが、遠い深海の中で木霊した。
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