20話→太郎VS一夏
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…………そして準備が出来たら、掛かってこい」
普段の軽薄な『ふり』は鳴りを潜め、構え続ける太郎に徐々に一夏のエンジンもかかり始めた。
見せつけてやりたい。兄の背中に隠れるだけだった、俺の成長を。
(行くぜ、白式!)
瞬間、常人の脚では到達不可能な速度で一夏の体は太郎に肉薄する。
同時に、一夏は両手で剣を振り上げ、兄に到達する直前で振り下ろす。
高速の振り下ろし。
シンプルではあるが、故に回避しずらいその一撃に、太郎は一切の動揺をしていなかった。
慌てず騒がず、振り下ろしを狙い、刀で相手の鍔本を叩く。
一瞬で一撃を『死に体』にされた一夏の鳩尾に、強い衝撃が走る。
「思いきりの良い攻撃だな。ブーストも使えてる。」
衝撃に数メートル下がる一夏の耳に、太郎の声が届く。
その言葉に急いで体を立て直すも…………
「…………で、次を見せてくれ」
既に太郎の身体は、先程と同じ隙の無い構えに戻されていた。
微塵も揺るがない『強者』の姿。
かつて幼心に目指したその姿に、自然と笑みが溢れる。
幼い頃からの憧れ、無敵のヒーロー。
小学校の作文で書いたままの『強さ』に、負けたはずなのに心は喜びに溢れる。
だから、だからこそ。
一夏(俺)の強さを兄(太郎)に届かせたい。
「…………しゃっ!」
次は身体ごと剣を振り回し、胴を薙ぐ。
瞬時にしゃがみ、一夏の脛に斬撃が叩き込まれる。
ISのシールドエネルギーの減少アナウンスを無視し、喉元に突きを捩じ込む。
それを最低限の首の捻りだけでかわすと、胸の中心に同様に突きが刺さる。
(強くなったな…………一夏)
勝負の内容を見ると、一方的に見えるが、それは一夏の全力のレベルが高く、それに対処する太郎の一撃に遠慮や手加減が少ないからである。
少なくとも、太郎は一夏の実力を非常に高く評価していた。
(やるじゃねえか、一夏。全ての一撃にちゃんと体重が乗ってる)
(俺が会えない間、手紙に書いていた筋トレや、あげたシミュレーターをきちんとやっていた証だ)
接近戦に持ち込もうとする一夏の片手をとり、捻りあげて床に倒しながら、太郎は内心、一夏をべた褒めしていた。
そして、それは太郎だけではない。
アリーナ室、観客用の席の中でも、俗に言う『貴賓席』と呼ばれる席から眺める少数の人々も、太郎と一夏の戦いを見て、歓声をあげていた。
「あの子は本当に今日、初めてISを着たの?だとしたら凄いわね。流石貴女の弟さんね、織斑先生」
清楚な身なりの上品な年配の女性がそう、声をかけると
「いえ、まだまだ未熟な弟です、学園長」
スーツに身を固めた、まだ年若い女性が、謙
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