第71話『昏き雷鳴』
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ねぇ。だから──もっと寄越せ」
「…ひゃっ!?」
座り込む緋翼に尻尾が襲いかかる。為す術もない緋翼はそのまま尻尾に拘束され、ブラッドの元へと引き寄せられた。彼は身動きの取れない緋翼の首に手を回し、にたりと不気味な笑みを浮かべ、
「それじゃ、いただきまーす・・・」
ブラッドは緋翼の肩を目掛け、鋭い牙の生えた口を大きく開く。身体に力が入らない緋翼に抵抗の術はない。
──ここで終わりなのか。
血を吸われて干からび、凄惨な死を遂げることを緋翼は予期した。もうダメだと、そう諦めた瞬間──
「…ぐあぁぁっ!?」
「へ!?」
刹那、眩い光と轟音が目の前を走り、ブラッドが断末魔を上げた。その時に尻尾の拘束は外れ、困惑したまま緋翼は地面に座り込む。
「今のって・・・」
一瞬だけ視界に映ったのは『黒い雷』。それを放ったであろう張本人を緋翼は首を動かして探す。
──居た。全身が禍々しい闇に包まれた人型の何かが。
「黒木……?」
草原にポツンと立っていたのは、緋翼がいつも目にしていた人物の姿とはかけ離れた存在だった。言葉を続けるのを躊躇うほどに。
そんな緋翼の逡巡をよそに、『闇』は軽く地面を蹴ると姿を消した。
「え、どこに──」
「あぁぁぁぁ!!!!」
背後から再び響いた叫び声。その苛烈さにさすがの緋翼も恐怖を感じ、背筋を凍らせた。
そしてピタリと静寂が訪れる。嫌な予感を感じながら恐る恐る振り向くと、そこには血も何もかもが焦げ果てたブラッドの姿があった。
「ひっ…!?」
その残酷な様子に、思わず悲鳴が零れる。炭だらけになったブラッドの身体は、もはや輪郭を留めていなかった。ピクリとも動かず、絶命しているのだとわかる。
「──っ」
怯える緋翼の眼前、『闇』へと変わり果てた終夜が佇んでいた。全身が黒に覆われ、目や口も判別できない。彼の身体から漏れ出す黒雷はパチパチと、緋翼の恐怖を煽っていく。
「どうして、また・・・」
しかし実は緋翼は、終夜のこの姿を過去に一度だけ見たことがある。それは彼が魔術を会得したばかりの頃まで遡り、練度が足りない故に制御し切れず、今と同じように暴走してしまったのだ。確か、その後は──
「ブ……」
「え、な、何…?」
不意に放たれた黒木の一言に、緋翼の回想が途絶える。その闇から湧き出るようなくぐもった声で何を言うのか、冷や汗が垂れた。
彼は一歩、また一歩と座り込んだままの緋翼に近づく。そして彼我の距離は、ついに手が届く距離まで至った。暴走している以上、仲間だからと油断できない。終夜はいつでも、その黒雷を緋翼に
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