第四章
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「またな」
「復員服でもですか」
「水原だからな」
彼だからだというのだ。
「絵になるんだ」
「そうなんですね」
「シベリアから戻って来たこともな」
このこともと言うのだった。
「そのこともな」
「そうですか」
「聞いた話がだな」
水原が戻ったこともシベリアに抑留されていたこともだ。
「しかしな」
「それでもですか」
「聞いてるだけでな」
「絵になる、ですね」
「それが水原なんだよ」
「そういうことですか」
「巨人に戻ってもこれからも」
水野は宮家に微笑んで話した。
「やっぱりな」
「水原は絵になり続けますか」
「話を聞くだけでな、そして見るとな」
「余計にですね」
「絵になるだろうな」
そうなるというのだ。
「水原はな」
「何かもって生まれたものですかね」
「そうかもな、世の中ああした人間もいるんだ」
「何をしてもそれが絵になる」
「そんな人がな」
水野は水原のことを宮家にこう話した、彼の帰還を聞いて。そしてだった。
彼の巨人での活躍を聞いてもこう言い阪神との試合を見てもだった。後楽園球場に時間がある時に足を運んで。
ブロックサインを出し負ける時の彼の背中を見て自分の子供達に言った。
「あれが水原だ」
「巨人の監督さんの?」
「水原さんって人なの」
「そうなの」
「そうだ、あれがな」
負けてファン達に背中を向けてベンチに下がる彼を子供達に見せての言葉だ。
「絵になるだろ」
「何ていうか格好いいね」
「サイン出してる時も」
「ベンチにいるだけで」
「そして背中見せるとね」
「余計にだよね」
「巨人の奴だけれどな」
ファンではないがというのだ。
「あれが水原だ、世の中ああしてな」
「恰好いい人がいるの」
「そうなの」
「何をしても絵になる奴もいるんだ」
子供達にこのことを教えたのだった、それからも水原の活躍東映や中日での監督時代でのことを聞いてもだった。
水野はいつも思った、そして年老いて曾孫達にも言っていた。
「水原みたいに恰好いい野球人はいなかったな」
「そうなの」
「昔の監督さんだよね」
「確か巨人の」
「そうよね」
「そうだ、何をしても絵になったんだ」
それこそというのだ。
「サードにいてもシベリアから帰っても監督になってもな」
「何時でもなの」
「絵になったの」
「そうした人だったの」
「話を聞いてるだけでもその姿を想像出来てそれがな」
実にとだ、水野は若い時と比べるとすっかり皺だらけになって細くなったその顔と身体で曾孫達に話した。
「また絵になったんだ」
「お話を聞いただけで」
「そんな人もいたのね」
「昔は」
「そうだ、聞いただけで絵になる姿を想像出来るのがな」
そこまで達し
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