第四章
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「それは」
「勿体なくはないさ、だからわしは廃人なんだ」
「叔父さんがそう言ってるだけじゃ」
「ヒロポンが残ってるって言っただろ、足だってな」
「悪いから」
「戦争で死んだ戦友を見ていてそれで嫌になってな」
この時は俯いて話した好美だった。
「ヒロポンに溺れたんだ、そしてわしがヒロポンをやっている間に和美がな」
「あの叔父さんだね、俺が生まれる前に死んだ」
「あんないい、立派な奴がな」
悲しい顔での言葉だった。
「喧嘩の仲裁をして刺されてな」
「随分苦しんで死んだんだね」
「そうなったからな」
それでというのだ。
「もうな」
「結婚しないで」
「このまま一人で生きていくさ」
「そうするんだ」
「そうして一人で死ぬな」
「それでいいんだ、叔父さんは」
「それでいいな」
こう言ってそしてだった、好美は。
そのまま一人で生きて一人で死んだ、慎太が高校を卒業して就職してから暫くして。その葬式は実に寂しいものだった。そしてその葬式の後でだった。
慎太は自分と同じく葬式に出ていた祖母にこう言った。
「何かね」
「寂しかったって言うんだね」
「うん、叔父さんのお葬式は」
「それはあの子が望んだからね」
祖母も慎太に寂しい顔で答えた。
「仕方ないよ」
「そうなんだ」
「そうだよ、だからね」
「こうしたお葬式になるのも」
「仕方ないんだよ、私等に出来たことはね」
それはとだ、祖母は俯いて悲しい顔で慎太に話した。
「こうしてお通夜とお葬式に出てね」
「見送るだけなんだ」
「それだけだよ、せめてね」
それだけだったというのだ。
「あの子はそれもして欲しくなかっただろうけれど」
「それでもなんだ」
「それをしたから」
それでというのだ。
「もうね」
「これでいいんだ」
「あの子はそれでも余計だって言ったけれど」
それでもというのだ。
「せめてこれ位はしてあげないと」
「何かね」
慎太は遺骨も収め終えて何もかもが終わってから話した。
「悲しかったね、叔父さん」
「それも仕方ないよ、あの子が選んだことだよ」
「こうなることは」
「廃人だって言ってね」
「それでだね」
「それなら仕方ないよ、見送ってね」
そうしてというのだ。
「それで終わりだよ、後はお墓に入れてあげて」
「それはしてあげないとね」
「駄目だよ、全く困った子だったよ」
好美のことを思いつつだ、祖母は悲しい顔のまま俯いて語った。
「ずっと昔のことに引き摺られてね」
「廃人だって言ってたね、自分のことを」
「そうして死んで、困った子だったよ」
実にとだ、こう言ってだった。
祖母は好美、自分の息子の遺骨を抱いて家に帰った、慎太はその祖母を見送って一人家に帰った。そ
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