【前編】狼の牙が折れる時(ダリル・ケイシー)
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混迷した彼女が、生まれて初めて『男』に媚びる言葉を放つ。
「貴方の女になります!」
「…………ほう?」
少し眉尻を下げた太郎を見て、ダリルは必死にアピールした。
「自分で言うのも何ですが、私、友達からモデル奨められるくらい、学校ではモテてましたし!体にも気を使っているのでスタイルも良いです!それに、私男嫌いだったから経験も無いし!」
(本当に可愛い子だなあ…………)
少し表情と口調を変えるだけで、容易く誘導に乗るとは。
(まあ、好都合だから良いけど)
『太郎にとっての』正解を選んだダリルに、太郎は笑みを浮かべて答えた。
拙いアピールが終わると同時に、太郎が手を叩く。
「なるほど、俺の命を狙った償いに、俺に一生奉仕し続けると?良いじゃないか。伝わったよ。君の誠意」
ダリルの心中に、安堵が広がる。
だが、太郎は性格が悪かった。
「とりあえず『仮』釈放といこうか。まあ、本当に許すかは態度次第かなあ…………」
安心して緩んだ心に楔を打ち込むと、太郎はダリルに近寄った。
首もとに何か薄いテープのようなものを貼り付ける。
「ん!?な、何を?」
「裏切らないダリルには言う必要のないものさ」
貼り付けられた時に感じる違和感に疑問の声をあげるも、そう返されては何も言えない。
続けて拘束を解かれると、そのまま太郎は横抱きにダリルを抱えた。
「あ…………あの…………何処に行くんですか?」
いきなりのボディタッチにビクッとするが、心を折られ、命を握られている現状逆らう訳にはいかない。
恐る恐る伺うダリルに、太郎は笑みと共に答えた。
「ん?今夜は体力使うだろうから、先ずは食事かな」
そう言って、彼は笑った。
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…………美味しい。
目の前の用意されたご飯を、夢中で片付けていく。
湯気が立っているコーンクリームスープ。
炭火で焼いたのか香ばしいベーコン。
サクサクのクロワッサンと共に差し出された『それ』の、なんと甘美なことか。
「旨いか?」
太郎の言葉に、頷きを何度も返す。
「そうか…………なら満足するまで食べると良い。その後に風呂に入ろう」
その言葉に暗に込められた『一緒に』の言葉に一瞬動揺する。
だが、『あの部屋』に戻るのだけはイヤだ。
その思いのもと、ダリルはゆっくりと太郎の問いに頷いた。
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