【前編】狼の牙が折れる時(ダリル・ケイシー)
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電話を続けた。
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「うん…………つぅ!」
体の痛みに身じろぎしながら、ダリルは目を覚ました。
どうやら、負けたあと拘束されたらしい。
手足が動かない状況で、必死に頭を働かせる。
(ISは、当然外されてるか…………クソッ、服まで変えられてやがる!)
誰が服を脱がせたのかは、言うまでもない。
とにかく現状を把握しようと、動ける範囲で身動きをしようとすると、部屋の扉がほんの少し開いているのに、ダリルは気づいた。
(しめた!これで少しでも情報を!?)
この日、初めてダリルは人が死ぬ所を見たことを後悔した。
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「さて、見てた監視用のモニターで、気絶してたのは見たが…………」
気の強い女ほど、逆境に弱いというのは本当だったらしい。
亡国企業の幹部であり、特に裏切り者や失敗者を処分する部門の長、『ジョン・ドゥ』。
彼に襲撃者の身柄、そして身に付けていた兵器と引き換えに得た、彼の『仕事』中の動画を、ダリルの頭に着けたVRシステムでさも『隣の部屋』で行われているように再生した。
やったことと言えばそれだけなのだが、どうやら恵まれた環境にいる『お嬢ちゃん』には刺激が強すぎたらしい。
(まあ、まだ悪夢は終わらんがね)
ここで心を立て直す暇もなく、三日ほど悲鳴と絶叫の中に置いてあげよう。
手足縛ってあるから、頭の装置に触れられないし外せない。
つまり、この悪夢は自身では絶対に終わらせられない。
(俺を除いてな…………)
3日後を想像し、彼の口元には自然と笑みが浮かんでいた。
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3日を過ぎ、ダリルの頭には既に脱出を考える気持ちは全く残っていなかった。
(死にたくない…………)
目を閉じても聞こえてくる、断末魔の声。
ありとあらゆる拷問が展開され、その悲鳴や言葉が聞こえているのに動く事ができない。
叫んでも、叫んでも、誰も来ない。
無理矢理寝ようとしても、この状況で見る夢が良いはずもなく、昨晩は拷問されて殺された自身を眺めている夢を見る始末。
点滴で栄養素は補給されているのか、致命的な状態ではないものの、彼女のメンタルは崖っぷちであった。
(…………ん?)
ダリルの鼻が、甘い香りを感じると同時に。
彼女の意識はまた暗転した。
「…………ここは?」
「死刑台前だよ」
椅子のようなものに縛られ、項垂れた状態で起きたダリルは、その言葉に顔を上げた。
東洋
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