第一章
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敵に塩
根室寿はこの時家で憤怒身となっていた、そうして妹の千佳に言うのだった。
「僕は今凄く怒ってるよ」
「だから甲子園から神戸のお家まで自転車で全速力で帰ってきたのよね」
「そうだよ」
その通りだとだ、寿は千佳に答えた。
「いつも甲子園には自転車だけれどね」
「いい運動になってるわよね」
「最近自転車部にスカウトされてるよ」
部活はスキー部であるがだ。
「是非入ってくれってね」
「じゃあ入ったら?」
妹の返事は実に冷めたものだった。
「あととりあえずね」
「これからだね」
「自転車で走って汗だくだし怒りを鎮める為にね」
むしろ後者の方が大きかった。
「お風呂入ってきてね」
「お水被って頭を冷やして」
「そう、湯舟にも入ってあったまって」
「またお水を被って」
シャワーでだ。
「それ繰り返してきてね」
「怒りを鎮める為に」
「さもないと見ていてこっちが鬱陶しいわ」
だからだというのだ。
「いいわね」
「じゃあ入って来るよ」
「そうしてきてね」
こうしてだった、寿は愛する阪神がよりによって巨人に惨敗しかも本拠地甲子園で自分の目の前でそうなった怒りを鎮める為に風呂に入った。
そしてその一時間程お風呂に入ってからテレビを観ている千佳に言った。とりあえず怒りは消えていた。
「酷い試合だったよ」
「ええ、例によってね」
「というか何でかな」
寿は千佳の向かい側の席に座って言った。
「今年の阪神は巨人に勝てないかな」
「まだ二勝七敗よね」
「そうだよ、しかも巨人は阪神に勝って」
それでというのだ。
「勢い得てるしね」
「最悪のタイミングで負けてるわね」
「ここで勝ったら阪神に勢いがついて」
阪神としてはそうなってというのだ。
「巨人は勢いを落とす」
「そんなタイミングで、よね」
「いつも負けてるね」
「もうあれね」
「あれって?」
「巨人を喜ばせてるわね」
千佳は兄に冷酷にこのことを告げた。
「正直私としても迷惑だけれど」
「広島ファンとしてもかい?」
「物凄くね」
こう兄に言うのだった。
「私巨人嫌いなのよ」
「僕もだよ」
「それも超嫌いなのよ」
「兄妹だよな、僕もだよ」
「それで何であんなアホな負け方するのよ」
妹が兄に言うのはこのことだった。
「打たれまくるか拙攻、フォアボールやエラーが絶対に致命的な得点につながって」
「ミスが必ず響くよな」
「ミスはあるわよ」
人間ならとだ、千佳はそれは仕方ないとした。
「けれど大事なのはそこからでしょ」
「それをどうカバーするかだよな」
「そこで何で傷口を広げるのよ」
そして負けるのかというのだ。
「確実にそうなってるじゃない」
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