第四章
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「あの人は」
「じゃあ先輩があの大統領と戦ったら」
「只じゃ済まないよ」
そうなるというのだ。
「冗談じゃないから」
「まああの人は別格ですよね」
「エニックス=スクウェアの漫画のラスボスみたいだから」
その設定がそのままだというのだ。
「正直妖怪より遥かに怖いよ」
「ヤクザ屋さんよりもずっと怖いですよね」
「そうだよ」
「じゃあフェイスブックに殺害予告したら」
「してみる?」
「しないですよ、私だって命は惜しいですから」
このことは身振りまで入れて否定する裕子だった。
「何でそんな自殺行為するんですか」
「そうだよね。だったらね」
「そんなことはですね」
「思ってもね」
「しないに限りますね」
「そうだよ。それと気付いてるかな」
ここで不意にこうも言った勇五郎だった。
「さっきからね」
「はい、あの人ですね」
見れば少し離れたところに一人の豹柄のスパッツに紫のラメ入りのシャツという大阪ならではの恰好の中年女がいた、しかも髪型は茶色に染めたパンチパーマである。
「ずっと私達を見て笑ってますけれど」
「あの人何なのかな」
「外見は大阪のおばちゃんですよね」
「そうだよね」
「いや、本当にあんなファッション何処で売ってるんでしょうか」
「わからないね。しかし派手だね」
「はい、しかも何で私達見て笑ってるんでしょうか」
裕子にとってはそれが謎だった。
「私が可愛いからスカウトしに来る訳でもないし」
「ここ大阪だから吉本か松竹だよ」
芸能事務所では、というのだ。
「どっちもアイドルはあまりじゃない」
「あれっ、NMBに吉本所属の娘いますよ」
「そうだったんだ」
「けれどあのおばさん吉本の社員さんっていうよりかは」
「お客さんだよね」
「そんな感じの人ですよね」
「スカウトの人じゃないね」
「そうですね。そもそも何であんなに笑うんでしょう」
裕子はその中年女を見つつ首を傾げさせた。
「私達を見てけらけらと」
「別におかしい身なりじゃないしね」
「はい、私も先輩も制服ですし」
それぞれ八条学園高等部の数多い制服から選んだものを着ている、確かに二人共高校生としては普通の恰好だ。
「別にです」
「おかしいところはないと思うけれど」
「どうして笑うんでしょうか」
「謎だね」
「はい、しかも何か」
裕子はその女を見てあることに気付いた、その気付いたことはというと。
「遠近感おかしくないですか?」
「遠近感?」
「あのおばさん私達から二十メートル位離れてますよ」
その距離だというのだ。
「それでも何か」
「あれっ、二十メートルにしては」
勇五郎も言われて気付いた。
「あのおばさん大きいね」
「さっきもっと小さくなかったですか?
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