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翠碧色の虹
第二十九幕:思い込みの虹
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時崎「そう・・・だといいのですけど」
直弥「時崎君がいつもどおりに七夏と接してくれる事が、七夏にとっても大切な事になると思っている」

<<凪咲「柚樹君が、いつもどおりで居てくれる方が、七夏にとっても良い事だと思うの」>>

さっき、凪咲さんにも同じ事を言われた。七夏ちゃんの事をもっとも良く知っているご両親が同じ事を話されたという事は。それが答えじゃないか!

時崎「ありがとうございます! 七夏ちゃんには、今までどおり話てみます!」
直弥「そうか! よろしく頼むよ!」
時崎「はい!」
直弥「無線ネットワークの事も!」
時崎「あっ! はい!」
直弥「それと、もし可能だったらでいいのだけど−−−」

直弥さんは、紙袋の中から、小さな箱をひとつ差し出してきた。

時崎「これは?」
直弥「信号機だ」
時崎「信号機?」
直弥「正確には『3灯式信号機』と言って、鉄道模型の部品のひとつだ」
時崎「・・・はい」

直弥さんから手渡された箱の中身は、短い線路と小さな信号機が一体化された商品だった。

直弥「この信号機が全部で6個あるのだが・・・」
時崎「6個ですか!?」
直弥「それを、設置してもらえないかな?」
時崎「俺がですか!?」
直弥「この前、七夏と一緒に踏切を設置してくれたと聞いてるから」
時崎「そう言われれば」
直弥「本当は、七夏にお願いしようと思ってたのだけど・・・」

俺は、直弥さんの真意を理解した。七夏ちゃんと一緒に過ごせる機会を作ってくれているのだと。

時崎「ありがとうございます! ぜひ!」
直弥「そうか! では、よろしく頼むよ」
時崎「はい!」

直弥さんから、信号機のレイアウト上への設置場所を記したイラスト図を受け取った。

直弥「七夏を見ていて、僕も変わらなくてはと思ってね」
時崎「え!?」
直弥「信号機には、色々と思う所があってね」
時崎「あっ!」

直弥さんの鉄道模型のレイアウト・・・敷かれた線路上には、信号機がひとつも無い。俺はそれほど列車に詳しくないから気づかなかったけど、直弥さんくらい列車好きだと、レイアウトに信号機が無い方が不自然な事なのかも知れない。

直弥「鉄道模型の信号機は、趣味を楽しむ事を第一に考える僕にとっては『無意味な物』だと思ってたんだよ」
時崎「・・・・・」
直弥「だけど、それは僕の思い込みであって、他の人もそうとは限らない。自分にとっては無意味であっても、他の人にとっては大切な意味があるのなら、目を背けてはならない」
時崎「大切な人にとって意味があるのなら・・・」
直弥「・・・そういう事になるかな」

直弥さんは、この模型の信号機の灯りの色は、俺と見え方が違うと思う。そして、七夏ちゃんがどのように見えるかも・・・
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