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水の国の王は転生者
第四十六話 月に一番近い場所
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える。

「マクシミリアンさま……」

「なんでもないよ」

「でも、これで、本当の夫婦に成れたんですね」

「ああ、そうだな、これで夫婦に成れたんだな。愛してるカトレア。君で良かった」

「わたしも、愛しています」

 ……

 もうしばらく二人は夜空を観賞していた。するとマクシミリアンが、地球のジャズのとあるスタンダードナンバーを歌い始めた。新世紀に人造人間に乗って戦うTV版のED曲の超大御所Verだ。

「聴いた事のない歌ですね」

「あの、無数の星々の中にある、何処かの星の歌さ」

「素敵な歌です」

「あの月へは行く事は無理だけど、ここは月に一番近い場所だよ」

「マクシミリアンさま……」

 カトレアはうっとりと目を潤ませ、マクシミリアンにもたれ掛った。

 歌い終わっても、二人は部屋に戻ろうとしない。地球で言う午前二時は当に過ぎていた。

 この夜空の下、行為に及ぶのも悪くない……と、舌を絡めあう深い方のキスをした。

 そして、お互い高まりあい、行為に及ぼう……とした時、不意に気配を感じた。

「誰だっ!」

『ひぃ!』

 マクシミリアンが、気配の方へ怒鳴りつけると、可愛い悲鳴が聞こえた。

(……糞っ! またかよ!)

 せっかくの美味しい所を邪魔され、マクシミリアンが毒気付く。

「もう! マクシミリアンさま、びっくりしましたわ」

「悪かったよ、怒鳴って」

「先ほどの声、女の子の声でしたわ」

「ひん……ひん……」

 階段の方向からすすり泣く声が聞こえる。

「こんな夜中に……」

「大丈夫よ。怖くないから出てきて?」

 カトレアが優しい声で、女の子と思しき影のある階段の方向と語りかけた。

「……」

 階段の向こうから息を飲む気配を感じた。
 そして、薄っすらと少女のシルエットが現れた。

「どこの子だろう? ……ん? んん〜?」

 頭の部分のシルエットが、普通の人間とは違う事に気付いた。

(あの尖がった耳……まさか)

「あら、あの耳」

 カトレアも気付いたようだった。

「……エルフ、か?」

 少女の耳は、エルフの様に尖っていた。

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