ターン90 鉄砲水と小さな挽歌
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れたんですよ。連絡しようと思ったけれど、PDFが音信不通になっているから、と」
そう言ってひょいっとそれまで乗っていた木の枝から飛び降り、数メートル近い落下の勢いを膝だけで完璧に殺し無音で着地する葵ちゃん。明菜さんもそれに続き飛び降りたがこちらは着地の際、明らかに葵ちゃんより無造作な動きで飛び降りたにも関わらず無音どころか周りの空気すらもピクリとも動かなかった。といってもこれは葵ちゃんの技量が未熟なのではなく、この人が規格外なだけだ。
「伝言?誰から?」
「河風先輩からです。『場所はわかるよね、清明?3年前、私が初めて清明に話しかけたところ。待ってるからね?ってさ』だ、そうですが」
「夢想が……」
僕を待っている。つまりはまあ、そういうことなんだろう。もう今度こそ先送りは通用しない、正真正銘の決着をつけるべき時だ。ただその事実を突きつけられても、落ち着きこそすれ驚きはしなかった。正直、心のどこかでそんな気はしていたからだろう。
ダークネスの侵略とこちらの抵抗が始まってから、不自然なまでに誰の前にも姿を現さなかった夢想。そして記憶を取り戻した稲石さん……夢想の片割れ。極めつけは二手に分かれて来いと言わんばかりの、2カ所あったダークネス出現ポイント候補。ここまであからさまにヒントは出ていたのだから、いくら僕でもさすがに察するというものだ。
黙りこくった僕を見かねてか、明菜さんが僕の後ろに回り背中をポン、と叩く。
「夢想ちゃんってこの前会った子だよね?なになに清明ちゃん、告白?告白やっちゃうの?」
「皆が皆、姉上みたいに年柄年中頭の中お花畑だと思わないでくださいね?あえて深くは聞きませんし、事情はやはり分からないままですが、先ほども言った通り私は先輩の判断を信じます」
フリーダムな明菜さんの言動についに頭痛でも起こしたのか、心底渋い顔でこめかみを指で押さえながらもそれをたしなめる葵ちゃん。心から力づけようとしてくれている彼女の言葉と明菜さんの底抜けの明るさに、これから先起こるであろう避けられない戦いに対してもほんの少し救われた気分になる。
「ありがと。じゃ、ちょっと行ってくるよ」
「ええ。コロッセオでは今、万丈目先輩と天上院先輩が中心となって皆さんを纏め上げています。なので私と……この呼んでもいないのにやってきた姉上しか自由に動けませんでしたが、それでも皆さん先輩については口を揃えて言っていましたよ。必ず、戻って来いと」
「……わかってる。夢想も連れてそっちに帰るよ。必ずね」
「追手は私たちにお任せください。これより先輩の元へは、1歩たりとも進ませません」
「私も手伝うねーっ!」
そう真剣な目で告げてデュエルディスクを構える姉妹の視線の先には、今まさに闇の中からその姿を現そうとするミスターTの
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