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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン90 鉄砲水と小さな挽歌
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よい」

 この見覚えのある巨大な拳。そして上空から重々しく聞こえてくる、相も変らぬ中二病が炸裂したようなもったいぶった言い回し。忘れられるわけがない、僕はこの持ち主を知っている。世界を揺るがす三幻魔の一角にして、その最強との呼び声高き悪魔の皇。

「……ラビエル!」
「久しいな。だが、もはや我々に言葉は不要。道中の障害は排除しておこう、成すべきことを成し遂げに行くがよい」

 三幻魔は砂漠の異世界でユベルが封印を解いて叩き起こしたのを追い返したのち、再びユベルが回収して……その後ずっと、行方不明のままになっていたはずだ。再封印されたわけではないことはこっちの世界に帰ってきてから1度見に行ったから確認済みだが、なぜこのタイミングでこの場所に?

『残念だが、私も何も知らないぞ。とはいえ、今は奴の言葉に理があることも認めねばなるまい』

 聞きたいことは山ほどあるが、確かにそれは後でもできる。今やるべきは別にある、か。ラビエルは恐ろしい悪魔で、人類の脅威、三幻魔……でも、僕はそんなラビエルと2度もデュエルをしてきた。まるで少し前の十代みたいな物言いになってしまうが、デュエルを通じて向かい合うことで、敵味方を超越して分かり合えた部分が僕らの間には確かにある。だから、僕にはわかる。彼は少なくとも今この瞬間だけは間違いなく、僕の味方だ。共に戦ってくれる、心強い仲間だ。

 再び目の前を巨大な拳、天界蹂躙拳が振り下ろされる。その着弾の衝撃を心地よく体全体で感じながら、ズタズタになった包囲網の中でも特に薄い場所に目をやる。おそらく、これが最大にして最後のチャンスだろう。いまだ戦っている富野、グラファ、そしてラビエルの顔を順番に見渡して、別れの挨拶代わりにすっと片腕を上げる。それを最後に、僕は戦場から脱出した。

「やっぱりここにいたんですね、先輩」
「やっほー清明ちゃん、来ちゃった。てへっ!」

 それを見計らっていたかのように頭上から聞きなれた女性の声がして、ばっと上を見上げる。真上の木の枝に乗ってバランスの悪さなどまるで気にしていないかのようにこちらを見下ろす、くの一姉妹がひらひらと手を振っているのと目が合った。

「葵ちゃん、明菜さんも」
「先輩のいるところには、いつだって人が集まりますからね。騒ぎを探せば一発ですよ」
「うん、それも清明ちゃんの魅力だとお姉さん思うけどね!……さて、葵ちゃん」
「わかってます、姉上。今回私がコロッセオを抜けて先輩を探していたのには、少し訳がありまして」
「お姉ちゃんは付添いだよー。また遊びに来たらなにかおかしな空気だったからね、大事な大事な葵ちゃんは、いざとなったら私が守るんだから」
「姉上ちょっと黙っててください、話が進みません。実は先ほど電話を頂きまして、先輩に向けて伝言を頼ま
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