ターン90 鉄砲水と小さな挽歌
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スターに対して勝手に悪魔が貸しを作られては困るのでな』
「そうかい?残念だよ、ずいぶんと優秀な参謀が付いているじゃないか」
目の前ではばったばったとミスターTが薙ぎ倒されていくのと同時進行で、うちの地縛神とどんな時でも狡猾な悪魔が僕を挟んで高度な舌戦を繰り広げる。
だがそんな一方的な光景を目の当たりにしても残るミスターTは表情1つ変えず、残った者どうしで互いの顔すら見合わせない不気味な意見交換をする……いや、こいつらがすべて同じミスターTという存在であることを考えると、むしろ独り言と言った方が正確なんだろうか。そのサングラスの奥の視線は例外なく、数人単位で自らを消し飛ばしていくグラファではなく僕の元へ注がれていた。
「これもまたイレギュラー、存在してはならない異物か」
「やはりあの男、あまりにも危険」
「真実が、さらに強く歪みつつある」
「なれば排除するしかあるまい」
相も変わらず何の話をしているのかはわからない、でも僕にとって悪い話なことだけはよく分かる。そして思わぬところで利害が一致して加勢に来てくれたグラファという存在にも、ミスターTは急速に適応しつつある。
まだ、足りない。この状況を覆す、なにか強烈で鮮烈なもうひと押しが。となると、やはり精霊召喚しかないのだろうか。今度こそ、僕も覚悟を決めるべきなのだろうか。さっき鎧田の登場により腕輪に戻しておいたデュエルディスクに目を落としたまさにその瞬間、地面が大きく揺れた。地震ではない。なにかもっと単純で、単発的な振動だ。まるで、恐ろしく巨大でかつそれにふさわしい質量を供えたものが、大地を揺るがして動き出したかのような。
「手札の白夜のグラディウスを自身の効果で……どわっととと!?なんだ、噴火か!?」
「……俺のハングリーバーガーによって戦闘ダメージを受けたな?ならばこの瞬間、儀式素材となった儀式魔人プレコグスターの効果が発動する。さあ、手札を1枚捨ててもらおうか。それと落ち着け鎧田、それとも違うようだ」
天田がデュエルの腕を止め、島の中央に位置する火山を仰ぐ。雲に覆われた暗い夜空の中で、僕らにとっては見慣れた火山は沈黙を保っていた。そうこうしている間に、またしても大地がどうん、と揺れる。だが、今度はそれだけではすまなかった。グラファが明後日の方向を見つめ、むう、と唸る。
「これはまた、大物だな」
その言葉の真意を問い返す暇は、誰にもなかった。間髪入れず次に訪れたのは振動だけではなく、視界を埋め尽くすような巨大な拳……そう、拳だ。魔法カードの方の地砕きさながらに叩き込まれた巨大で青い筋肉質な右腕が、大量のミスターTだけを正確に巻き込んで衝撃波とクレーターを生み出した。
「魔技、天界蹂躙拳。影なるものよ、闇に沈み魔に呑まれるが
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