ターン90 鉄砲水と小さな挽歌
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儀として名乗らせてもらおう。我が名はグラファ、またの名を暗黒界の龍神。次元を越えられる力は、君の専売特許ではないのだよ」
「グラファ!」
覇王の異世界における最大勢力、暗黒界の中でも最高の力を持ちながらもユベル事件の一環でその力を失い、雌伏の時を過ごしていた龍神。
あの時僕がこの悪魔に出会った時間はほんのわずかでしかなかったけれど、それだけでもわかるいかにも悪魔らしい狡猾で抜け目ない性格の持ち主だ。個人的には決して嫌いな性格ではないけれど、間違っても敵に回したくはなく、かといって味方にしてもいいように利用されることが目に見えている、どちらに転んでもこちらにほとんど利が無いという大変やりづらい相手だ。
そのグラファが、あの時変身していたのと同じボロボロの老人姿で結界通路の上部から頭をひょいと出す。真下にいた僕を見つけると悪魔というより小悪魔的な笑みを浮かべ、そのままこちらを見下ろして気安く声をかけてきた。
「よもやまた会うことに、それも君の世界で再会できるとはね。君の頭に浮かんでいるであろう当然の疑問には、聞かれる前に返答しておこう。覇王が消えてその残党も散った後、再びあの世界は私を首領として暗黒界がその大部分を統治することになったのだが、覇王城の再建も終わらぬうちにあるアマゾネスが謁見を申し出てきてね。ここまで言えば、察しはつくだろう?それに暗黒の闇を住処とする我々にとっても、ダークネスの手下はいろいろと目障りな存在なのだよ。つまりあの時と同じく、互いの利害が一致したわけだ。ここでトゥルーマンの存在を消せるのであれば、それに越したことはない」
三沢にタニヤと僕が再会したのはグラファと出会う前だから、本来ならば僕とグラファの会話を知るはずもない彼女がグラファに援軍を頼んだという点には時系列的に違和感が生じる。だけど、なにせこの悪魔のことだ。僕を見出した自分の眼力を証明し喧伝するため、あの戦いの話を広めていてもおかしくない。
そうこうしているうちにその全身を結界通路から現して着地したグラファがその腕を空中で一振りすると、ただそれだけで巻きおこった闇の風がひしめいているミスターTのうち何人かをまとめて吹き飛ばし、その体が闇を纏う無数のカードになっては崩れていく。
「さあ、行きたまえ。これは君に対しての貸し1つとしておこう」
「ありが……」
『待て、ストップだマスター。そこは私が言うとおりに返しておくといい。いいか?まずこう言うんだ―――――』
「え、ええと?『とんでもないね、グラファ。僕からそっちへの貸しは2つ、これでようやくトントンさ。なんたって僕は覇王を倒しただけじゃない、あんたに水だって1杯恵んでやったんだよ?』……えっと、これでいい?」
『悪く思うな、龍神よ。悪魔の甘言……まあ仕事熱心なのは結構だが、私のマ
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