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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン90 鉄砲水と小さな挽歌
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。ちょうど船の準備もできてたわけだし、サンダーのためならってんで血の気の多い奴らを引き連れて大慌てで海を渡ってきたのさ。ねーちゃんにも一緒に行こうぜって言ったんだけど、また別の所にも顔を出さなきゃいけないっていうからな」

 筋肉でバインバインで三沢の知り合い……間違いない、アマゾネスのタニヤだ。覇王の異世界からまたこっちに来ていたのは三沢だけなんだとなんとなく思っていたけど、どうやら彼女は彼女でこちらの世界で動いていたらしい。そしてその救援要請の成果が、このドンピシャのタイミングで現れたという訳か。
 もちろん、この話が全部ミスターTのひねり出した真っ赤な嘘という可能性も否定はできない。だが、無駄に用心深い奴のことだ。もし作り話で油断を誘うならばこんなありえるかありえないかのギリギリの線を攻めてくるよりも、もっとそれらしい嘘を考え付くだろう。
 迷ったのは、ほんの1瞬だった。

「……この場は任せたからね、ノース校!」
「おう、とっとと行って来い!いいなお前ら、本校の奴らなんかに後れを取るんじゃねえぞ!」

 最後に一声だけ残して身を翻し、鎧田の威勢のいい声とそれに応える鬨の声に背中を押されるようにして走る。すぐさまそれに気づいたミスターT軍団が手を伸ばして捕まえようとしてきたが、そのたびにそれをノース校生が身を挺して作り上げた人の壁が押し返しては片っ端からデュエルでその場に釘付けにしていった。
 でもミスターTはいけ好かないが、気に食わないことに手ごわい相手だ。最初こそ不意を突かれていただろうが、その動揺も長くは持ちはしない。歯を食いしばって足を動かしどうにか包囲網を抜けようとするも、どうやら十代の側に藤原優介がいる分ミスターTはこちらに分身を裂いていたらしい。まるで途切れることなく同じ顔が湧き出してくる状態から抜けられずに苦戦するうち、次第に僕を守ってくれていたノース校の人員も1人また1人と数が減っていく。

「こん……のっ!」

 このままではジリ貧なのは目に見えている。誰も口には出さないが、徐々に焦りの空気が色濃くなってくる。
 だが、その時だった。その場にいたミスターTを何体か吹き飛ばして突然、何の前触れもなく空間に闇の穴が開いた。そしてその奥底の闇の中から響き渡るのは、ゆっくりとした愉悦の笑い声。初めのうち遠く小さく聞こえていたその声も、謎の穴を通って急速にこちらに近づいてきているらしく次第に大きくなってきた。
 そして僕は、この声の主を知っている。

「この声って、まさか……!」
「そう、まさかだ。まさか、君にまた会えるとはね。それも太古よりうろうろと目障りだった憎き闇、そのおまけまで引き連れてきてくれるとは僥倖だ。トゥルーマンよ、この私の名をよもや忘れたとは言うまいな?だが悪魔は礼節を重んじる、一応の礼
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