ターン90 鉄砲水と小さな挽歌
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けどけえっ!」
僕よりも数段ヤケクソな声が森に響き渡り、それに遅れて何人、いや何十人単位の足音がこちらへ近づいてくる。こちらを見ていたミスターTの視線が一斉にそちらを向き、僕も背を伸ばして覗き込む。アメフトやラグビーばりのタックルで包囲陣をこじ開け、見覚えのある男たちがミスターTから僕を守るかのように人の壁を作る。
「なんとか間に合ったぜ……遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よってんだ!デュエルアカデミアは北の果て、無敵のノース校番格、鎧田翼!本校だけで何おっぱじめてやがる、俺らも当然混ぜてもらうからな!」
「鎧田!?」
あまりといえばあまりに唐突な乱入に呆気にとられてその名を呼ぶと、それに応えるかのように人壁の一角から身の丈2メートル近い巨漢が低い声で宣言した。
「……サンダー四天王が十、次鋒の天田、いざ参る。先攻は貰った、儀式の下準備を発動。この効果によりデッキから儀式モンスターのハングリーバーガー。さらにその名が記された儀式魔法、ハンバーガーのレシピを手札に加える」
「それに天田……サンダー四天王まで……」
ノース校のサンダー四天王。元々はまだ僕らが1年の際、本校を飛び出した万丈目が流れ着いたノース校でお山の大将となって勝負を挑んできたときのメンバーだ。毎年毎年、特に僕とこの鎧田との間にはなにかと腐れ縁が続いていたが、それもつい先日僕の勝ち越しという結果で幕を閉じた。
……あれ以来この男はまたノース校に戻り、卒業後のプロ入りもすでに決まっていたはずだ。それがなぜこの本校に、それも仲間のノース校生まで引き連れて当たり前のような顔をして来ている?まさかこれもミスターTの変装か、とも疑りかけたところで、こちらの心を読んだかのようにタイミングよくミスターTと睨みあっていた鎧田が振り返る。
「なにぼさっとしてやがる。せっかくノース校から俺たちがはるばる来てやったんだぞ?事情はだいたいわかってるから、感謝しながら早く行け!……テメエの相手は俺たちだぜ、グラサンのおっさんよお。フィールド魔法、アンデットワールドを発動!」
「でも、どうしてここに?」
もちろんこんなことを聞く暇がないのは百も承知だ。だけど芽生えた不信感と相まって、どうしても聞かずにはいられなかった。
「なんだ、そんなことか。元々卒業前にもう1回、俺たちのサンダーにサプライズで会いに行こうって話は前からあったんだけどな。なんでも、最初に本校とデュエル大会した時にお前たちの側にいた……三沢とか言ったか?そいつの知り合いだとかいう筋肉ムキムキでバインバインのねーちゃんが何時間か前にノース校まで来たんだよ。だいぶ焦ってるみたいだから話を聞いてやったら、あのサンダーがいるこの本校で今、世界規模のとんでもないことが起きてるっていうじゃねえか
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