ターン90 鉄砲水と小さな挽歌
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『む?……出遅れたなマスター、来客だ』
「ああうん、わかってるよもう!この忙しい時に……!」
いざ反撃だ、と気合を入れ直して1歩踏み出すか踏み出さないかのうちに、突然それはやってきた。周囲の木陰に、覆い隠された闇の向こう側に、第三者の気配がある。こんな芸当ができるのは、僕の知る範囲では奴しかいない。
「とっとと出て来い、ミスターT!」
「「「「よかろう」」」」
「あ、あら……?」
先手を打って声を張ったところまではよかったが、まさかその返事が真正面だけでなく四方八方から聞こえてくるとは思わなかった。ざっざっざっと足音を立て、僕の周りをぐるりと取り囲むようにコピペ集団がわらわらと湧き上がる。もっともミスターTは1人いたら30人はその辺に潜んでいてもおかしくない相手、1人目を見つけた段階でこうなることぐらい覚悟しておくべきだったのだ。
「まずかった……かな?」
『かもしれんな』
冷や汗がひとすじ、頬を伝う。頭ではわかっていたつもりだったが、チャクチャルさんとの会話に少しばかり時間をかけ過ぎた。時間は、時間はどれだけ残っている?あまりないだろう。だからといって助けを呼ぼうにもPDFはスクラップ、投降するふりをして隙をみて逃げ出す……ことも難しいだろう。精霊を実体化させての召喚、それも大型モンスターを呼んで物理的に蹴散らす手もないではないが、当然それはミスターT側も真っ先に警戒する部分のはずだ。僕としても、どこまで精神力が削られるかわかったものじゃないその方法は本当にギリギリまで使いたくはない。なにせこの世界は、精霊が元々実体を持つ覇王の異世界や砂漠の異世界とはわけが違うのだ。もっと訓練すれば消費を抑えての使役も可能だろうけど、少なくとも今の僕には夢のまた夢だ。そしてこうしている間にも1人、また1人と包囲網を作るミスターTは増えていく。
「こうなったら……!」
やぶれかぶれだろうがなんだろうが、結局これしかない。腕輪から水妖式デュエルディスクを展開、即座に構えて周りをじろりと睨みつける。闇のゲームもそれはそれで体力の消耗が激しいけれど、いつまで続けなければならないかもわからない精霊召喚よりはまだマシだ。とはいえいつかはそれも視野に入れなければならないだろうけど、とりあえずこれを何体か間引きしてからでないと。
『マスター、まさか……』
「しっかりついてきてよ、チャクチャルさん?さあ、消えたい奴からかかってこい!」
『ああ、やはり力技か。仕方ない、付き合おう』
威勢よく啖呵を切り、構えたまま周囲を威嚇する。無謀な挑戦をあざ笑うかのようにミスターTたちの冷酷な笑みが濃くなり、一周即発の雰囲気が辺りに充満する。
だがそれが爆発する寸前、突然事態が動いた。
「うおおおおお!邪魔だああ、どけど
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