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強欲探偵インヴェスの事件簿
盗賊の前にモンスターの前菜を。
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つ、

「死ぬ覚悟の出来た奴から掛かってこい」

 と、伝わるハズもないダガーラプター達に睨みを効かせて呟いた。





 一方、ハリーに面倒を押し付けて逃げた馬車に乗っている一行。彼らの下にもハリーと同等、いやそれ以上の災難が降り掛かろうとしていた。インヴェスの普段の行いのせいかもしれない。

「おいおい、嘘だろ……?」

馬車の幌から顔を覗かせたインヴェスが、顔をひきつらせながら上空を見上げている。その視線の先には、

「グオオオオオォォォォォッ!」

 縄張りに入り込んだ彼等を威嚇するように吼える、飛竜ーーワイバーンの姿があった。

 ワイバーン……それはこの世界の食物連鎖の頂点とも言うべき捕食者。更に上にはドラゴン等の幻獣が居るには居るが、滅多に人前に姿を現す事は無く、正に読んで字の如く幻の存在であるが故に、ワイバーンが食物連鎖の頂点であると認識している者が大半だ。しかも運の悪い事に、飛竜の中でも気性が荒く、戦闘能力も高い事で有名な種類だ。

猛毒の爪と尻尾の棘。

特殊な内臓を駆使した火炎攻撃。

高い飛行能力と地上に降りた際の剛脚。

 しかし、この大ピンチにも関わらずインヴェスの顔に浮かぶのは恐怖でも焦燥でもなかった。ただひたすらに『面倒だ』という一念で顔が歪む。

「おいクソ猫ぉ!俺があいつを引き付ける!攻撃喰らって車がぶっ壊れねぇように逃げときな!」

 そう叫んで車内に立て掛けてあったインヴェスの得物を掴む。

「インヴェスさんっ!」

 冒険者を生業とするミーアにも、彼の飛竜の危険性は十分に知っている。複数の冒険者が徒党を組んで、どうにか倒す獲物だ。ましてや単独で倒すなんて噂に聞くS級冒険者や英雄の所業だ。

「まぁお兄さんに任せておきなさいって……あばよっ!」

 そう言い残して、インヴェスは車から飛び降りて……着地の衝撃を殺しきれずに砂漠の上をゴロゴロと転がる。

「うぇっ、ペッペッ!口に入ったぞ畜生!」

 毒づいているが、着地に失敗した自業自得である。

「さ〜て、と。チャッチャと始末つけさせてもらうぜ?」

 インヴェスはそう呟きながら、抱えていた折り畳み式のそれを展開する。固定フックをガチンと噛ませ、コッキングレバーを引く。そして巨大な『銃』が姿を現した。
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