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強欲探偵インヴェスの事件簿
盗賊の前にモンスターの前菜を。
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が始まるかのようなその動きに、ミーアは不安げな顔になる。

「ど、どうしたんですかハリーさん?」

「気付いてないのか?モンスターに囲まれている」

 ミーアもモンスターを狩る事を生業としている為、気配には敏感……なはずなのだが、それにはエルフならではの特性が絡んでいる。エルフは植物と簡単な意思の疎通が出来るのだ。その為、その力を応用して獲物の気配を探る。ミーアもまだ未熟な為、植物と意思疏通が出来ていると理解していないが、何となくこっちの方にいそうだ、というのは周囲から伝わってくる。しかし、今居るのは砂漠。植物など僅かにしかない。そのせいでミーアの感知能力は並みの人間以下にまで下がっている。無意識に便利な能力を普段から使っている弊害と言ってもいいかもしれない。

「おいインヴェス起きろ、モンスターの群れだ」

「あぁん?知るかよ、お前が何とかしろよ」

 寝転がったままの相棒に、一応声をかけるがそもそも動く気がない。まぁ、元はと言えば依頼人の希望に沿って危険な砂漠に連れ出している部分もあるため、多少の負い目がハリーにはある。

「ちっ……解った、俺が片付けてくる。その間しっかり彼女を護ってろよ?」

「誰に向かってそんな口聞いてんだ、この筋肉ダルマ」

 正に傲岸不遜、という言葉が相応しい態度。しかし、その態度が虚勢でも大言壮語でもない事をハリーは知っている。馬車から飛び降りて、その衝撃を緩和するように砂地をゴロゴロと転がる。

「ペッペッ、口に砂が……」

 最後が華麗でないのはご愛嬌だろう。ゆっくりと立ち上がりながら身体に付いた砂を払い、周囲を確認する。

「ダガーラプターの群れか……」

 ダガーラプター。主に砂漠に生息する二足歩行の肉食蜥蜴だ。鉤爪はナイフのように鋭く、発達した脚と尻尾を使って跳躍して飛び掛かってくる攻撃を得意とし、群れでの狩りを行う。

「ひぃ、ふぅ、みぃ……ざっと30はいるか」

「グオッグオッ!」

 かなり巨大な群れだ。群れのボスはかなり手強い事が予想される。それでもなお、ハリーの余裕は崩れない。

「グアォッ!」

 余裕をかましているハリーに業を煮やしたのか、群れの中の1匹がハリーに飛び掛かる。ハリーは反応できなかったのか、動く気配がない。

「ぬぅんっ!」

ーー否、動けなかったのではなく、動かなかったのだ。背負っていた大剣の柄に手を掛けたかと思うと、まるで空中のハエでも叩き落とすかのように、ダガーラプターの頭蓋にハリーの大剣の切っ先がめり込む。そのまま地面と大剣にサンドイッチされたダガーラプターの頭部は、グシャッとかグチャッという生々しい音をたてて粉々に砕けて血や脳漿、肉片などを撒き散らした。その飛沫をまともに顔面に喰らって顔を深紅に染めつ
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