第五章
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「あのお客さんコスプレでしょうか?」
「これは」
紗菜はその客を見てすぐにだった、店の外を見た。窓の向こうから見える駐車場では。
雨がしとしとと降っていた、強さはそれ程でもないがそれでもだった。駐車場のアスファルトはもう濡れていた。
その状況を確かめてからだ、紗菜は店員に言った。
「お店の中に入ってお話するわね」
「はい、あのお客さんのことで」
「ええ、そうするわ」
こう言ってだ、紗菜は店員を店の中に入れた。そうして彼女に話した。
「あの子人間じゃないわよ」
「えっ、幽霊ですか?」
「幽霊でもないわ」
そのことも否定した。
「妖怪よ」
「妖怪なんですか」
「雨降り小僧っていう妖怪よ」
「そういえば今日から天気が崩れるって言ってました」
店員は紗菜の言葉から朝通勤する前に見た天気予報のことを思い出した。
「実際に降りはじめましたね」
「あの妖怪は雨を降らせる妖怪なのよ」
「だから雨降り小僧ですか」
「そうよ、から傘もそうだって言われてるけれどね」
「じゃああの妖怪が出たら」
「暫くはね」
そうなるとだ、紗菜は店員に困った顔で話した。
「そうなるわ」
「それは困りますね」
「ええ、大阪は暫く雨よ」
「あの妖怪が出て来たからですか」
「これで暫くは洗濯もの乾燥機で乾かさないといけないわね」
店の中でもこのことを話した。
「やれやれよ」
「洗濯ものが大変ですよね」
「全く、困ったわ」
「私も暫くお外に干せないですね」
雨ならとだ、店員も困った顔で言った。
「何日分かまとめて洗濯して休日にコインランドリーで乾かしますね」
「それも手ね。しかし本当にね」
「暫くはですね」
「乾燥機の厄介よ」
それになるとだ、紗菜はやれやれと思った。
雨降り小僧は普通に回転寿司を食べてそれから普通の金を払って店を後にした、だが紗菜が言った通りにだった。
大阪はそれから暫くは雨だった、それで紗菜はマンションで夫の慎吾に言った。
「雨が続くわね」
「そっちのお店に雨降り小僧出たんだって?」
「ええ、出たわ」
「おいの店でも見たって子いたぞ」
「そうなの」
「高校生の子でな、から傘さしてまた大阪に戻ってきたなとかな」
そんなことを言っていたというのだ。
「暫く留まるかとか言ってたな」
「やれやれね」
夫からの話を聞いてだ、紗菜は心からこの言葉を出した。
「本当にそうよ」
「暫く洗濯ものは部屋干しか」
「そうなるわね、これからも」
「雨も続くとな」
「困るわ。それで思うことはね」
それは何かというと。
「ついてないわね」
「雨が続くとか」
「そう思うわ。だから前も言ったけれどね」
「幸せはささやかなものでか」
「ささやかなものが少しでもそう
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