第一章
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雨降り小僧
結城紗菜はその細めの睫毛が長くしっとりとした感じの目で休日の窓の外を見て笑顔になっていた。それで夫の慎吾に言った。
「今日もお外で干せるわね」
「ああ、洗濯もの」
「お布団もよ」
こちらもというのだ。
「干せるわ」
「お布団はともかく洗濯ものは乾燥機で干せるじゃないか」
慎吾は妻の烏の濡れ羽色で濡れた様に艶めかしく長い髪の毛を見つつ言った。背は一七六ある彼より十センチは小柄でズボンがよく似合う。胸はシャツを突き破らんばかりに大きい。高校時代に彼が熱烈にアタックして射止めた相手だ。顔の感じは穏やかで優しくそれでいて色気がある。正確は大人しいがしっかりしている。
「そうじゃないの?」
「駄目よ、乾燥機にかけたら電気代がね」
「ああ、それなんだ」
「それがかかるから」
だからだというのだ。
「出来る限りはね」
「外で干すのがいいんだ」
「ベランダからね」
二人が住んでいるマンションのそこでというのだ。
「干すのがいいのよ」
「電気代がかからないから」
「それとね」
「それと?」
「お外で。日差しで干すと一番乾きがいいのよ」
「そういえばそうか。お袋も行ってたな」
慎吾はその丸い目を持つ四角い顔で言った、身体つきも何処か四角くスポーツ刈りが実によく似合っている。ただし部屋義の作務衣はあまり似合っていない。尚二人の両親はどちらも実家の鹿児島にいる。
「干すのならな」
「お外で、よね」
「それが一番いいってな。ただな」
ここでこうも言った慎吾だった。
「おいの実家鹿児島だからな」
「鹿児島って桜島よね」
「あの火山しょっちゅう噴火するからな」
それでというのだ。
「火山灰が凄くてな」
「洗濯もの干してても着くのよね」
「ああ、そうなるからな」
それでというのだ。
「大阪みたいにいつも干せないんだよ」
「そうよね」
「いや、それだけでもな」
火山灰がない、それだけでもというのだ。
「大阪いいよな」
「そうなのね」
「よく高校からこっちに出たよ」
「いつも言ってるわよね、高校八条学園にしたのは」
「ああ、もう火山灰ばかりの場所にいたくなかったんだよ」
桜島のそれが嫌だったというのだ。
「だからだよ」
「八条学園受験して」
「合格してな」
「大学も含めて七年寮にいたのね」
「いや、火山灰がなくてよかったよ」
神戸にはというのだ、八条学園にある。
「それで今住んでる大阪にもな」
「火山灰ないしね」
「いいな、関西は」
「そんなに火山灰嫌なのね」
「嫌も嫌だよ」
それこそと言う慎吾だった。
「鹿児島にいればわかるからな」
「その割にいつも実家に戻るの楽しみにしてるわね」
「それはそれだよ、
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