第一章
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から傘
梅雨でもないのに雨が多い、それで大阪の人達も何かと文句を言っていた。
「今日も雨か」
「最近雨ばっかりやな」
「昨日も一昨日も雨で」
「今日も朝から雨や」
「やれやれやな」
「全くやな」
こんなことを言い合いながら登校したり出勤したりしていた、それは大阪以外の場所に行く面々も同じで。
電車の窓から止む気配なぞなく降り続ける雨を見て嫌な顔をしていた、その中にあるカップルがいてだった。
神戸に向かう電車の中でこんなことを話していた。
「こっちに帰る頃には止んでるかしら」
「どうだろうね」
「天気予報は止んでるって言ってるわよ」
「そうなんだ」
古田勇人は同じ八条学園高等部に通う高野結衣に応えた、結衣は一八〇近い背丈の結衣と比べると一五〇位しかなくかなり小柄だ。黒髪をおかっぱにしていておっとりとした優しく清楚な顔立ちをしている。目の光も優しい。着ている制服は黒地に模様やスカーフがライトブルーになっているセーラー服だ。勇人は黒髪をボブにしている穏やかな顔立ちの少年で着ている制服は白の詰襟だ。二人共普通科の一年生である。
その勇人がだ、結衣の言葉を聞いてこう言った。
「そうだといいけれどね」
「ええ、もうこの三日ずっと雨で」
「そのちょっと前も長雨で」
「まただから」
「もう嫌になるよね」
「梅雨はまだなのに」
それでもと言う結衣だった。
「それがね」
「こんなに長雨になってて」
「困るわ」
「そうだね、鬱陶しいね」
「雨も必要だけれど」
それでもというのだ。
「あんまり長いとね」
「もう嫌になる」
「そう、じめじめしてね」
さらに言う結衣だった。
「湿気も酷くなって」
「カビとか?」
「そう、それよ」
これも問題だというのだ。
「カビだって生えるし」
「それもあるね」
勇人も結衣のその言葉に頷く。
「厄介なことに」
「そうでしょ。だからね」
「もういい加減っていうんだ」
「止んで欲しいわ」
結衣はその可愛い眉を顰めさせて言った。
「本当にね」
「そうだね、そういえばね」
「そういえば?」
「いや、昨日まだ出たじゃない」
「ああ、大阪にね」
「今回もとんでもない殺し方だったみたいだよ」
勇人は眉を曇らせて結衣に話した。
「もう手足は鋭利な刃物で切断されててね」
「手足をなの」
「完全に達磨にされていて」
勇人は結衣にその殺人事件の話をしていった。
「目もは潰されて舌は強引に引き千切られて串刺しで公園に晒されていたらしいよ」
「今回も酷い殺し方ね」
「そうだよね、悪名高い弁護士だったけれど」
勇人はその犠牲者の話もした。
「何かヤクザ屋さんとか変な市民団体と結託していて」
「そん
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