暁 〜小説投稿サイト〜
真田十勇士
巻ノ百三十七 若武者の生き様その六

[8]前話 [2]次話
「幕府の赤備えというとな」
「井伊殿ですな」
「四天王の家のお一つの」
「あの家ですな」
「まさに」
「武門の家じゃ」
 幕府の中でもとだ、木村は前を見据えて言った。
「相手にとって不足はない」
「ですな、ではです」
「一気に攻めまするか」
「その武門の家に」
「こちらも」
「そうしようぞ、では今から攻めるぞ」
 こう言ってだった、木村は兵を前に出した。そうしてだった。
 木村は井伊家の軍勢と果敢に戦いはじめた、その彼の戦ぶりにだ。
 井伊家の主井伊直孝は唸って言った。
「敵は木村長門守殿だな」
「はい、あの旗印はです」
「間違いありません」
「木村殿です」
「あの御仁です」
「そうか、若い方と聞いておるが」
 それでもと言うのだった。
「これはな」
「かなりですな」
「かなりの戦ぶりですな」
「お見事です」
「水際立ったものです」
「これは我等も恥じぬ戦いをせねばな」
 直孝は馬上からこうも言った。
「そしてな」
「そのうえで、ですな」
「木村殿に勝つ」
「そうしないとなりませぬな」
「そうじゃ、卑怯未練はせずにじゃ」
 こう言ってだ、直孝は木村に負けじと戦った、そうしてだった。
 両名は果敢に戦った、やがて流れは井伊家に傾き。
 木村は窮地に陥った、ここで大野から人が来た。
「ここはです」
「下がれとか」
「はい、言われていますが」
 大野がというのだ。
「ここは」
「そうか、しかしじゃ」
「それでもですか」
「拙者は退かぬ」
 こう言うのだった。
「最後の最後までじゃ」
「戦われるのですか」
「うむ」
 こう使者に言うのだった。
「そうしてよかろうか」
「そこまでされてですか」
「拙者は先に進んでな」
「そしてですか」
「井伊家の軍勢を退け」
 そしてというのだ。
「その先にいる将軍殿、そしてな」
「大御所殿もですか」
「討ち取る、それまではじゃ」
「退かれぬのですか」
「そのつもり、だからな」
 その言葉は無用と言ってだ、そしてだった。
 木村は実際に振り向くことなくそのまま先に進んだ。その軍勢が減っても戦い続けてそうしてであった。
 庵原助右衛門という男が前に出た、庵原は名乗ると木村に問うた。
「お相手致して宜しいか」
「願ってもないこと」
 木村は庵原に槍を手にして答えた。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ