第一章
[2]次話
銀髪の薬売り
クレアミア=フレールという名前を知っている者はこの街には少ない。ただ銀髪で右目は赤左目は青で白い肌の小柄な薬売りと聞くと。
誰もが知っていた、街の神父は彼女についてこう語った。
「とてもいい娘です」
「そうなのですか」
「はい、一人で旅の薬売りをしていますよね」
神父は話を聞いてきた街の市役所の若い役人に言った。
「そうですよね」
「その様ですね」
「彼女は薬の知識が豊富で」
それでというのだ。
「あらゆる薬や薬草に通じていて調合にもです」
「長けていますか」
「見事です。ただ」
「ただ?」
「彼女は悲しい人です」
神父は役人にこうも語った。
「家族にお兄さんがおられたそうですが」
「一人ではなかったんですね」
「はい、しかし」
家族として兄がいた、だがそれがというのだ。
「今ではあの様にですね」
「一人ということは」
「先立たれてしまったのです」
「病か事故で」
「いえ、ある森で薬草を摘んでいる時に」
まさにその時にというのだ。
「ドラゴンに襲われて」
「ドラゴンですか」
「凶暴なブラックドラゴンに」
「ブラックドラゴンといいますと」
そのドラゴンの名前を聞いてだ。役人はその顔を蒼白にさせた。そのうえで神父に対してこう言った。
「ドラゴンの中でも」
「一番凶暴ですね」
「はい、レッドドラゴンと並んで」
「その森には沼地もありまして」
「ブラックドラゴンは沼地に住んでいますからね」
そこを寝床にしている、それがこのドラゴンなのだ。
「では」
「はい、お兄さんはです」
「うっかりと沼地に近付いてですか」
「縄張りに来たと思ったドラゴンに襲われて」
そうしてというのだ。
「その強酸の息を浴びて」
「そうですか」
「かわされたそうですが背中に受けられて」
ドラゴンのその息をというのだ。
「家に帰られてです」
「亡くなられたんですか」
「あの娘の手当のかいなく」
クレアミアのそれのというのだ。
「残念ながら」
「そうでしたか」
「その時からだそうです」
神父はクレアミアのことをさらに話した。
「若し自分がより薬や薬草のことを知っていて」
「調合もですね」
「出来ていれば」
「お兄さんは助かったかも知れない」
「そう考えたそうで」
「それで、ですか」
「薬、薬草、調合のことをです」
それ等全てをというのだ。
「学んだそうです」
「それであの様にですか」
「まだ子供ですが」
それでもというのだ。
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