暁 〜小説投稿サイト〜
リング
213部分:ラグナロクの光輝その六十七
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

ラグナロクの光輝その六十七

 戦いは完全に連合のものとなっていた。帝国軍の艦艇は次々に撃沈され残っているものも少なくなっていた。クリングゾルも嫌でも勝敗が決しようとしていることがわかった。
「ここでの戦いは終わりだな」
「無念です」
 部下達が苦渋に満ちた顔でそれに応える。
「最後の最後で」
「誰が最後だと言った?」
「えっ!?」
 部下達はクリングゾルのその言葉に思わず顔を向けた。
「ですが閣下」
「我等はこの戦いに」
「まだノルンがある」
 これはクリングゾルの言葉であった。
「ノルンがある限り我々には敗北はない」
「しかし」
「我等の敵は何だ?」
 動揺を露わにし続ける部下達にあえて問うてきた。
「何と」
「我等の敵は何だと聞いているのだ」
 クリングゾルはまた問うてきた。
「連合だな」
「はい」
「それは」
 彼等も認識しているつもりであった。
「その連合は。誰によって率いられているか」
「あの七人です」
 それもすぐに答えることができた。連合軍のことに関してはもう聞かれるまでもないことであった。
「そしてその中心にいるのは」
「パルジファル=モンサルヴァート」
 部下達はさらに述べた。
「あの男です」
「そうだ、あの男だ」
 クリングゾルは強い声で言った。
「七人、とりわけあの男によって敵は支えられている」
「はい」
「扇を潰すには要を潰すだけでいい」
 これがクリングゾルの考えであった。
「よいな、それだけだ」
「それだけですか」
「そしてもう一つ言おう」
 クリングゾルはさらに付け加えてきた。
「戦いというのは最後の最後に立っているだけでいいのだ」
「最後の最後に」
「それだけだ。それまでどれだけ敗れていようが最後の戦いに勝てさえすればいいのだ」
「ではラインで」
「最後の戦いを挑む」
 彼は言った。
「そして勝つ」
 同時に宣言もした。
「よいな」
「畏まりました」
「それでは」
 クリングゾルは徐々に戦線を退かせてきた。後詰は比較的損害の軽微な艦が回る。その間に損害の酷い艦艇から戦線を離脱していく。パルジファル達はそれを見てクリングゾルが何を考えているのかすぐに見抜いた。
「撤退か」
「ここでか」
 彼等にとっては少し予想外であった。もう少し粘るかと思ったのだが。
 だがすぐに納得できるものを感じた。最早帝国軍の劣勢は明らかでありそれを覆すことは不可能である。ならば。
 これ以上の戦闘は無意味である。だから彼は決断したのである。それを察した。
「彼等の予想退路は」
 パルジファルは撤退する帝国軍を見ながら部下に問うた。
「今ローゲに算出させています」
「そうですか」
 それが出たのはすぐであった。報告が上がる。
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ