出会い
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のことがわかってくると、男が話し上手だということも気に入った。外にはほとんど出たことがなく、縁側から柵に囲まれた広い庭を眺めている女に、男はいろいろな話をしてくれた。
今日ここに来るまでに、こんな獣や鳥に会ったとか、ちらりと山賊の影を発見したとか(男が住んでいる大和から女の住んでいる河内まで龍田山を越えなければならず、その龍田山には山賊がいたとされる)、町でこんな滑稽な人がいた、など、すべて女が見たことがないもので、女は驚きっぱなしであった。
にこり、と男が上品な笑みを見せた瞬間、女はまるで体に電が落ちたような衝撃を感じ、それと同時にカッと頭に血が上った。女は一瞬戸惑った。なぜなら、それは人生で一度も感じたことのない感覚だったからである。しかし、それが一般に聞く「恋」という感情だということに、それほど時間はかからずに理解した。
それからというものの、男は月に2、3回ほどの頻度で、女のもとを訪れるようになっていた。毎回男に会うたび、女はますます男に惚れ、のめり込んでいった。その声、しゃべり方、時折見せる曇りがない笑顔。今では、男に会えるその時間のために、生きているようなものだった。
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