暁 〜小説投稿サイト〜
筒井筒〜白泉オリジナルバージョン〜
始まり

[8]前話 前書き [2]次話
 ぼんやりと、縁側に座って、水分を多く含んだ重めの雪が降るのを眺めていた。低く垂れこめた雪雲は、河内(こうち)一体に雪を降らせるだけでなく、彼女が一番見たい景色を覆い隠している。


 今年、初めての雪だった。


 手がかじかみ、感覚がなくなっていくのを感じながら、ひとつ、白い息を吐いた。色を失くした自分にとって、庭のすべてが銀世界に覆われるのはありがたいことだった。


 焦点の定まらぬ彼女の脳裏に一人の男の顔がちらつき、その瞬間胸が締め付けられるような痛みが走る。思わず顔をしかめたが、痛みが治まった後、彼女の口角はゆるりと上がっていた。



 もう一度、今は見ることのできない龍田山(たつたやま)があるほうを見やる。





 あれは、桜の舞う季節だった……。
[8]前話 前書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ