暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
変わりゆく者達へ 〜Message from will of the primitive〜
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めて辺りを見渡したら……

 塊がね、一変してた。

 白と黒が来るまでは存在してなかったものが。
 (いびつ)だった筈の塊の表面を、丸く覆い尽くしていたの。

 降り注ぐ黄金色の光が、融けていく氷塊で波立つ海面に弾かれ。
 透明な大気で揺れる空間を水色に照らし。
 生まれ出た喜びに咲き誇った(だいだい)色の花が。
 蒼の大地に響く力強い言霊と共に、柔らかく優しい桃色の旋律を奏でる。
 藍色に吹く慈悲(かぜ)に導かれた緑色は、赤色に支配された命を包み込み育む。
 そのすべてが重なり合って、虹色の時間(れきし)を刻めば。
 経験はやがて、暮れ沈む紫色に染まり。
 積み重なった記憶は夜の(おわり)を越えて、朝の(はじまり)へと還っていく。

 それは、創造神が求めていたもの。
 白と黒の世界では、瞬きの間に消えてしまうもの。 
 創造神が最初に疑問を抱いた『何か』の答え。

 即ち、全位に方向性を持つ『万象』……

色彩(へんか)

 そう!
 これが、君達が生まれ育つ『(せかい)』の始まりだよ。
 それらを見て聴いて触れて感じ取った瞬間の感動が、君にも解るかい?

 素晴らしい!
 なんて美しい連なりだ!
 その色の一つ一つが、確固たる方向性を有しているのに!
 影響し合うことも溶け合って新しい方向へ向かうこともできるなんて!
 まさしく奇跡!

 白だけでも黒だけでも、両方揃っていても足りなかった。
 当然だ!
 創造神は、この鮮やかな法則で彩られた世界をこそ、望んでいたんだ!

 って、胸の高鳴りを抑え切れなかったよ。
 涙なんかも、ボロボロボロボロ溢しちゃってね。

 ……でも、喜びは束の間で引っ込んじゃった。

 うん。
 君の言う通り。

 君達の世界は『有限』だ。
 私達が引き延ばした現象の当事者たる君達には分かりにくいだろうけど。
 君達の世界の法則は『一瞬開いて閉じる』がすべて。
 君達の世界に生じた色彩(へんか)は、白と黒が撒いてゴールデンドラゴンが砕いた力の欠片と、新しい物質が尽きた瞬間に、幕を閉じるだろう。

 そして、隔絶空間全体が、完全に冷え切ったら。
 つまり、創造神とあの子の力が変質を終えたら。

 君達の世界は消滅する。

 創造神が白と黒の世界で体感したままに。
 避けようもなく、絶対に。確実に。

 哀しかったよ。
 生まれた瞬間から……ううん。
 生まれる前から求めていた色彩が、有限の内でしか観測できないなんて。
 こんなにも綺麗な世界が。実際に存在する世界が。
 幻みたいに、呆気なく消え去ってしまうなんて。
 すごく…………嫌だったの。

 だから、創造神の|
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