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SAO−銀ノ月−
乙彼
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応答の言葉がないこの時間も、処刑宣告のようにすら感じながら。

「……どうしたのよ、いきなり」

 そうして絞り出すかのようなリズの声と、手を包み込むような柔らかい感触がショウキに伝わる。それがリズに手を握られたということだと気づいたのは、彼女の温度が伝わってきてしばし後のことだったけれど。

「……誕生日プレゼントだよ、サプライズの。おめでとう、リズ」

「ふーん……」

 それきり、リズも言葉を発することはなく。照れくさくてリズの方を見ることは出来なかったために、彼女がどんな表情をしているのかを伺うことは出来なかったが……ただ。ただ、握られている手の力は増していることだけは、確かだった。

「ショウキ……あたしね、今……」

 そうして永遠にも感じられた沈黙の時間を終わらせたのは、やはりリズの一声からだった。さらに応答する暇もなく、リズの言葉は続いていた。とはいえ彼女もどんな言葉を口にすれば悩んでいるのか、ゆっくりと一言一言、言葉を選びながら紡いでいて――


「……倫理コード、切ってるんだけど……」


 ――その言葉にショウキが何かしらの反応をするよりも早く、顔が歪むほどの強さで手が握り締められた後、すぐに手とともにリズの感触が離れていく。勢いよく立ち上がるとショウキから背を向けて、逃げるように離れた後に、見たこともない速度でシステムメニューを操作していく。

「――っご、ごめん! なんでもないから! あーあたし……用事の時間だから!」

 ……そのままショウキの方を向くことはなく、リズはすぐさまこの世界からログアウトしていった。ショウキからすればまったく声をかける暇すらなく、リズが光の粒子となって消えていった方向へ、ただ手を伸ばすのが限度だった。

「……あー……」

 リズに伸ばしていた手を下ろすと、ショウキは代わりに自身の掌で顔を覆う。成功したのか失敗したのか、ナイスな展開なのかそうじゃないのか、それさえも分からないこのリズが立ち去った状況に、タダより高いものはないという格言を思い出せずにはいられない。

「倫理コード……か」

 かといってリズ本人に直接『どうだった?』などと聞くわけにもいかず、数少ないリズが去る前の言葉を参考にするしかないと、彼女が呟いていたことを反芻してみると。

 倫理コード――プレイヤーに設定されている、いわゆるセクハラ防止コードであり、男性プレイヤーから無許可で女性プレイヤーやNPCに触れば、酷いときは瞬時に吹き飛ばされるという代物だ。それを切っているという言葉が意味するところとは――

「……わからん」

 ――リズと同居するにあたって、店商売の途中で吹き飛ばされたり牢獄送りにされてはかなわないので、確かに切っているのだろうなとはショウキも
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