乙彼
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うタイミングもない。
『あ。言って逃げたり、さりげなく言っちゃダメですよ?』
『そうですね。しっかり、面と向かって言った方がいいと思います』
「……ちょっとショウキ。またボーッとしちゃって」
そして更なる二人からの助言もまた、タイミングを狭める原因となっていた。しっかりと面と向かって『愛してる』とリズに言ってのける――確かに元手はかからないが、なんと気恥ずかしくて難しいプレゼントろうか。そうして悩むショウキは、リズからすればまたもやボーッとしてしまったように見えたらしく、不機嫌そうにジト目を向けてきていて。
「ああ、悪い……どうした?」
「ふん。もう今日は店じまいかしらね、って。大体のお得意様は来たし」
「ああ、注文の品も終わったし……そういえば、用事があるって言ってなかったか?」
「んー……もうそんな時間ね」
……とはいえ、その前にリズの機嫌を悪くしては元も子もない。手遅れなような気もするが、どうにかこうにか話をそらすべく、先んじて聞いていた用事とやらについて触れてみたが。どうやらやぶ蛇だったらしく、むしろそのままログアウトさせてしまいそうだ。
「でも、まだ大丈――」
「――リズ!」
「な、なによ? 急に……」
結局言うことは出来なかったともなれば、アドバイスをくれた彼女たちに会うのが恐い……もとい、会わせる顔がない。何か言おうとしていたリズの言葉をさえぎって、ショウキは覚悟を決めて彼女に向き直った。たった五音の言葉を口にすればいいだけなのだと、心中で自らに言い聞かせながら。
「あー、えっと、その、だな……一回しか言わないからな」
しっかりと隣に座る彼女の瞳を見据えて。吐息が重なりあう距離……には少し遠いが、お互いがお互いしか見えない距離に、ショウキはリズに吸い込まれそうな錯覚すら覚えつつも。そんな見つめあいに照れたのか、頬を紅潮させながら、プイッとそっぽを向くリズが、文句を言おうともう一度だけショウキの方を向いたタイミングで。
鼓動の高鳴りで《アミュスフィア》の安全装置が起動しそうになりながらも、しっかりとリズの瞳を見据えながら言い放った。
「……愛してる」
「――――!」
いざ羞恥心を乗り越えた後は、驚くほどするりとその言葉は喉を通り抜けた。それどころかずっと鬱屈していた故か止まることを知らず、勝手に口を支配していく。
「いつも元気づけてくれて、一緒にいて楽しくて、俺なんかに支えさせてくれて……いつも、ありがとう」
……そこまで言ったところで、どうにか支配を自らの元に取り戻し、今度はショウキが顔を背ける番だった。あいにくと手軽なところに鏡などはないが、自分がこの世界でどんな顔になっているかは想像に難くない。リズから
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