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いたくないっ!
第十章 風が吹いている
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なっているアニオタの話だ。

「別に放課後でもいいのに」
「いやあ、お返しに、これを持ってきたのでえ。もしかして早く読みたいのかなーなんて思って」

 と、もう一冊の本を差し出した。
 細い目で睨む不気味な表情の子供のカバー絵。発売したばかりの「異界グルメ」第一巻。
 少女漫画雑誌に連載開始時から敦子が大絶賛していた漫画で、単行本化にあたり、もともと興味は示していた定夫に、今度持ってくるからと約束していたものだ。

「おお、サンキュ。さっそく読んでみるよ」

 定夫はイカグル第一巻を受け取った。

「どんなのかなあ」
「ぜーーったいに面白いですよお」

 自然に、楽しげに、会話をしている二人。
 を、見ている教室内の生徒たちは相変わらず、

「お、おおっヲタヤマがあ!」
「じょんじょじょ女子とっ!」
「ふ普通にっ」
「会話しているう!」
「逆にキモチわりいいい!」
「だ、誰かあいつらに水爆を発射しろーっ!」

 今日初めての、こうしたやりとりではないのに、まるで今日初めて見たかのように驚きまくり騒ぎまくっている三組の生徒たちであった。

「ちょ、ちょっとあたしっ、確認してみるっ!」

 今日初めての光景でないのに信じられないのか、何故か声を裏返らせながら茶髪の女子生徒、(あん)(どう)(かず)()が慌ただしく、定夫の無駄にデッカイ背中へとささっと近づいて行った。

「ねえヤマダくうーん」

 半歩の距離にまで寄ると、しなつくるような声で、呼びかけた。

 身体をくりんと回転させて振り向いた定夫は、クラスの女子生徒に密着されていることにびっくりして「ほめらあ!」とわけの分からない叫びを上げながら、頭を激しく後ろへのけぞらせた。

「あいたっ!」

 敦子の悲鳴。
 のけぞった定夫の後頭部がイナバウアーで窓枠を飛び出して、廊下側に立つ彼女の鼻っ柱をズガッと直撃したのだ。

「な、な、なっ、おっ、おーーっ、おーーっ」

 わけの分からない叫び声を発しながら、ぶるんぶるんぶるんぶるん大きく頭を振っているヲタヤマ。
 女子に話しかけられたことに、パニックを起こしているのであろう。

「よおし、いつも通りのヲタヤマだあ! つうか気安くこっち見てんじゃねえ!」

 安藤和美の容赦ない右ストレートが、ヲタヤマの顔面をぶち抜いていた。
 ぐらり揺らめくヲタヤマの巨体。と、っと足を踏み出し、一瞬持ち直したように見えたが、

「まおーっ!」

 という不気味な叫びと同時に、どっばああっと鼻から血を噴き出し、地響き立てて床に沈んだのであった。

 安藤和美、ウイン!

     7
「本当に大丈夫なんですかあ?」

 敦子は心配そうに、定夫の
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