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いたくないっ!
第十章 風が吹いている
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っくりした顔をしている。

「なんですかそれえ!」

 小馬鹿にされ、胸の前に両の拳を握ってやきもき抗議するほのか。その腕に、しゅるり蜘蛛の糸が巻き付いていた。

「ひゃあああ!」
「ひゃあじゃねえよ! ボケッとしてんなあ!」
「そんなこといわれても……あれ、切れないっ!」

 縛られた両腕を引きちぎろうとするほのかであるが、糸が想像以上に硬いのか、力を込めども呪縛は解けず、いたずらにもがくばかり。

「あたしに任せとけ!」

 あおいが、右手を前へかざす。
 その指先から水が勢いよく噴き出し、ほのかを傷つけることなく、蜘蛛の糸のみをいとも簡単に切断していた。

「あおいちゃん、ありがとう」
「なあに。こいつの毒で我を忘れてガーッと怒鳴っちまったお詫びだよ。……だから、こいつのとどめは、あたしがさす!」

 あおいは、マーカイ獣ズヴァイダの乗用車ほどもある巨体を、きっと睨みつけた。

「世迷い言を。貴様ごときにやられる我と思うのか!」

 ズヴァイダの本体にある蜘蛛の口、そこから数本の糸が、突き刺すような凄まじい勢いであおいへと伸びる。

 あおいは、避けるのも面倒とばかりにパシパシと叩き落とすと、前へと走り出していた。
 ぶっ、と襲う糸を高く跳躍してかわし、華麗にトンボを切ると、

「あおいアクアスパイラル!」

 ぐるぐるスピンしながら急降下。
 いつの間にか右足に、魔装具と呼ばれる無骨な武器が装着されており、それがマーカイ獣ズヴァイダへの巨体へと突き刺さっていた。

 爆発、
 闇の合成獣の巨体は雲散霧消、闇に還り、そこにいるのは青い色の魔法女子あおいだけであった。

 己が放った凄まじい技の威力で地面が削られすり鉢状になったその中心で、片膝を着いている。

 はあ、はあ、と息を切らせていたが、
 やがて、
 さすがにちょっと疲れたあ、と、そんなほっこり笑顔で立ち上がると、拳をぎゅっと握り、



「あおい、ウイン!」



 右腕を突き上げた。

     2
 すっかり暗くなった、夜の公園、
 高校の制服姿の、ほのかと、あおい。
 二人の間に、ふわふわ浮かぶ猫型妖精、ニャイケル。

「あおいちゃんが、魔法女子だったなんて」

 まだ信じられない、といったような、ほのかの表情。

「うん。あたしも、自分のことながらまだ信じられないや。変身しただけじゃなく、あんな強そうな怪物をやっつけちゃったなんてさ。……最近ほのかの周りに、たまにチラチラと変なのが見える気がしてたんだけど、こいつだったんだな」

 あおいは、ニャイケルを指差した。

「変とかこいつとかいうんじゃねえ! つうか指をさすんじゃねえよ! ほのかの友達のくせに、口も
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