第十章 風が吹いている
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のコラーゲンたっぷりのやわらかなほっぺたを左右に引っ張った。
「まったくもう。まあた三年生のところなんかにきてんだからなあ」
「えへへえ」
敦子はほっぺた引っ張られたまま、頭のてっぺんをこりこりとかいた。
「へへーじゃないでしょ。アニメの声当てを手伝うんだとかいって、あたしたちとの友達付き合いがすっかり悪くなっていたけど、でも、もうそれとっくに終わってんでしょ」
「うん。でもアニメの話をしているのが楽しくて、つい」
「ついもなにも、わざわざ四階まできてんじゃん。よりによってイシューズなんかのとこにさあ。……あんたまさか、あの三匹のどれかと、付き合ってたりなんかしてないでしょうね」
「それはないよお」
敦子はおかしそうな顔で、手首返して縦にぱたぱた振った。腕を広げたムササビのように、むにょんとほっぺの伸びた顔のままで。
「じゃあ今日の放課後は久々にあたしたちに付き合いなさい。セカンドキッチンと、ジターグズでカラオケ、どっちがいいか選ばせてあげよう」
「ジダーグズでカラオケ! あそこのギガ唐揚げポテト美味しい! それと、『ポータブルドレイク』のエンディングが入ってるかも知れないし」
「あんた最近、すっかりオタを隠さなくなったわね」
「うん、まあ事実だから。でも、もともと隠してはいなかったよ」
わざわざ主張しなかっただけ。
「主張しない」を最近やめただけだ。
それが周囲には、大きな変化と取られるということなのだろう。
今日は久々のカラオケか。
「ポータブルドレイク」の歌、入っているかなあ。
8
乾いた風が、吹き抜けている。
太陽が、じりじりと荒野を焦がしている。
ハゲタカは……飛んでいない。何羽かスズメが見える程度だ。残念。
ここは都立武蔵野中央高等学校の、校舎前のレンガ道である。であるからして当然サボテンも生えてはいないが、
ざっ、
ざっ、
ざっ、
ざっ、
でもなんだかそんな雰囲気に浸っちゃったりなんかしてる感じに、山田レンドル定夫、トゲリン、八王子の三人は、肩を怒らせながら歩調を合わせて横並びに歩いている。
ひゅううー、
つむじ風が、土埃や落ち葉をくるくる運んで行く。
ざっ、
ざっ、
彼らは歩く。
くるくる舞うつむじ風の向こうに、中井修也の姿が見えた。
今日も女子生徒と歩いている。
しかも今日は、三人もいる。
先日出くわした時とは、完全に別の女子たちに入れ替わっているというのに、女子たちは相も変わらず中井にからみつくように密着している。
中井修也と、三人の女子たちは、楽しそうにお喋りしている。
中井修也、勉強優秀ス
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