第十章 風が吹いている
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言葉のままだよね。と、八王子は疑問に思ったわけである。
「いやあ、いわれてみれば。なんだかすっかり固まってしまったでござるなあ。生まれた時分からこんな喋り方している気がするでござるよニン。五十年後もこうだったらどうしようという不安もありつつ」
トゲリンは、ネチョネチョ声で笑いながら、後ろ頭をかいた。
「ザンス言葉使ってたこともあったくせになあ。半年間くらい」
定夫が茶化す。
「えー、トゲさんが? 信じられない。……聞きたいっ!」
「といわれても、いまさら恥ずかしいザンスよ。ミーももう最上級生ザンス」
ぷーーーーーっ。
敦子は吹き出していた。
お腹抱えて指差して、あはははは大爆笑だ。
「これを聞いてて本当になんとも思ってなかった当時の自分たちの感覚ってなんなんだろうな、って思うよ」
と、定夫がぼそり。
「あの頃トゲリンが一番いじめられてたのって、その喋り方が原因だったんだよね」
「知らない! なんで教えてくれなかったザアアアンス! あの時、あの時っ、ミーは蓮本慎也に足掛け転ばされ顔を蹴られて、鼻の骨を折ったんザンスよ! てっきりキャラ立ちが甘いから殴られるんだと思って、日々必死にザンスの練習をしていたんでござるぞうおおおお!」
「お、戻った。ござるに」
「ザンスに違和感というところに、二年という歳月を感じるなあ。おれたちの成長ということかも知れないな。たちというか、おれと、八王子の」
「ほかっ、ほかに、なんかトゲさんの面白い喋り方ってないんですかあ?」
トゲリンの魂の絶叫そっちのけで、三人が盛り上がっていると、
「敦子いたああ!」
階段から、一人の女子生徒が姿を見せた。
「あ、香奈。どうしたの?」
女子生徒は敦子の友達、橋本香奈であった。
「物理の教材。あたし一人に全部運ばせる気なんかよ」
「いけない、忘れてたっ! ごめんね」
「これからだから、まあいいんだけど、もう行かないと。物理室反対だから」
橋本香奈は敦子の手を掴み、軽く引き寄せながら、定夫たちを一瞥。
「敦子借りますね。というか返してもらいますね。ほら、行くよっ」
階段へと、ぐいぐいと引っ張って行く。
「ちょっと香奈っ、階段で引っ張ると危ないよっ! そ、それじゃレンさんたち、またねっ!」
敦子はぐいぐい引っ張られながらも階段の途中で振り返り、腕を振り上げて「ほのかウイン!」のポーズを作った。
慌ててウインポーズを返しかけていたオタ三人の姿は、踊り場を折れたことで完全に敦子の視界から消えた。
と、そこで不意に橋本香奈は足をとめて、くるり振り返ると、敦子
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