第十章 風が吹いている
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顔を覗き込むように見上げた。
「ほがあ、いつものことだからっ」
定夫は、ついっと自分の鼻を人差し指で撫でた。
ほがあの意味はよく分からないが、少なくとも若大将の真似をしているわけではないのだろう。
いじめられっ子というわけでもないが、クラスで一番底辺の身分であることに違いなく、カンペンで意味なく頭をカンカン叩かれるとか、クラス委員で一番嫌な係を押し付けられるなどは、日常なのである。
こっち見たというだけの理由で女子に右ストレートをぶち込まれて鼻血を出して倒れるなどは初めての経験であったが。
定夫と敦子の二人が歩いているのは、南校舎の四階つまり三年生の教室がある廊下。
何故に三年生の廊下などを歩いているかというと、定夫が三年生だからである。
そう、これまで説明する機会を逃してしまっていたが、時は流れて定夫たちは三年生、敦子は二年生に、それぞれ進級しているのだ。「魔法女子ほのか」のテレビアニメ化が決定した、その数か月後に。
とはいっても、最上級生の風格オーラなど定夫には皆無であったが。一年生にカツアゲされていても、誰も不思議に思わないだろう。
「ごきげんよう」
「うおっす」
五組の教室から、トゲリンと八王子が出てきた。廊下を歩いている敦子たちが、窓から見えたためだろう。
「ごっきげんよおおおっ!」
敦子はぴょんと跳ねて着地ざまズッガーンと右腕を突き上げた。これほど、ごきげんように相応しくない言い方もないだろう。
「なんの話してたのさ」
八王子が尋ねる。
「鼻血の話が終わって、敦子殿に借りた漫画の話をしようかと思ってたとこだよ」
「ああ、異界グルメでござるな。略してイカグル、アキナイ堂出版の週刊カチューシャに去年より連載中、先週火曜日にコミックス第一巻が発売されたばかりの」
「そう」
「ぜーーったいに面白いんだから。トゲさんも八さんも、よろしければお貸ししますから読んでみてくださあい」
「しからば、レンドル殿の次に拙者が」
というトゲリンの顔を、改めてじーっと見ながら八王子がぼそり、
「あのさあ、まったくどうでもいい話なんだけどさあ、年度が変わったというのにトゲリン、キャラ変えてないよね」
質問というよりは、気付いたことをつい口に出したという感じだ。
なにをいっているのか、八王子に変わって説明しよう。
トゲリンはいつも自分にキャラ設定をかして、そのキャラを演じている。
そして、時々キャラが変わる。
といっても喋り言葉が変化する程度であるが。
なにかの影響を強く受けてある日いきなり、ということもあるが、これまで必ず変化していたのが心機一転の進級タイミング。
だというのに、いまだ去年からのサムライ
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