第十章 風が吹いている
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は手錠のように呪縛されていた。
「蜘蛛のくせに口から糸を吐くのかよ!」
叫び、必死に抗うが、それも虚しく一方的にぐいぐいと引っ張られていく。
「我はマーカイ獣ズヴァイダ。蜘蛛ではない」
「んなこと知るかっ! それよりも……てめえは、絶対に許さねえからな。卑怯な真似ばかりしやがって。ほのかとの仲を、切り裂こうとしやがって」
精神を狂わす毒粉を撒き散らして人々を仲違いさせる、という作戦のため、町の住人は大混乱。ほのかたちも例外でなく、親友である二人は大喧嘩をしてしまったのだ。
といっても、毒粉の効果薄くぽけーっとしているほのかを、あおいが一方的に責め立てただけであるが。
あおいの身体は、蜘蛛の糸にずるずると引きずられ、お互いの距離はもう目と鼻の先であった。
マーカイ獣の本体である蜘蛛の方が、鋭い歯をガチガチと打ち鳴らした。
「許さなければ、どうするというのだ」
蜘蛛の背から生えている女性の、口から喜悦の声が漏れた。
だが、次の瞬間、その笑みは一転して憤怒の表情へと変わっていた。
「こうすんだよ!」
と、あおいが渾身の力を手に集中させ、糸を引きちぎったのである。
とっ、と後ろに下がったあおいは、仁王立ちになり、そっと目を閉じると、拳を握りしめた。
「あおいの、青い水のせせらぎが、いま、激流になる!」
目をかっと開き叫ぶと、どどおおんという重低音が鳴り響く。
すべてを飲み込むかのような濁流が、数匹の青い龍になってぐねぐね舞い踊る。
カメラズームで、あおいの腕がアップになった。白い魔道着の短い袖から伸びている、細くしなやかな腕が。
すうっ、と青い龍が通ると、袖もグローブも溶け消えて、肩から先は完全に素肌になり、もう一度青い龍が通るとその腕は、青い袖と、細かな装飾の入った青いグローブとに覆われていた。
周囲をぐるり回りながらカメラが移動し、今度は下半身がアップになる。風にぱたぱたなびく白いスカートの前を、龍がうねりながら舞い通ると、布地の色が白から青へと変化していた。
それまで全体的に白を基調に青い装飾のある服装だったのが、反対に、青を基調に白や赤の混じる服装へと変わっていた。
金色のオーラを全身にまといながら、あおいは力強く微笑み、拳をぎゅっと握った。
「パワーアップで限界突破、魔法女子あおいアクア! 子供の涙は聖なる流れ。乙女の祈りは清らかなせせらぎ。それを笑うは邪悪な魂。からんでほどけぬ糸ならば、この激流でぶっちぎる!」
握った右拳を、ぶんと正面へと突き出した。
「うおおお、ほのかと違って噛まずにいえてるぞ!」
ふわふわ宙に浮かぶ猫型の妖精ニャイケルが、び
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