巻ノ百三十六 堺の南でその五
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「やはりな」
「十年で、ですか」
「それで許してやるのじゃ。しかしあ奴はのう」
「とかく勘気が強く」
「強情者でもあるからな」
「今もああですし」
しかもあらためる素振りもなくだ。
「蟄居にしても反省しておらぬのでは」
「その時は仕方ない」
「永蟄居もですか」
「考えておくことじゃ」
「そうなりますか」
「うむ、しかしな」
「それでもですな」
「仕方ない、その場合は」
忠輝の行いがあらたまらなぬならというのだ。
「そのことはわかっておく様にな」
「それでは」
「今言うことはそれだけじゃ、ではな」
「まずはですな」
「兵を進めるぞ」
「わかり申した」
秀忠も頷きそうしてだった、幕府の二十万の大軍はまずは大坂の南に向かっていた。このことは大坂も知っていてだ。
大野はすぐにだ、秀頼に言った。
「では我等もです」
「堺、そしてじゃな」
「紀伊の方に進み」
そうしてというのだ。
「浅野家の軍勢を迎え討ちます」
「そうするな、しかし」
ここで秀頼は顔を曇らせて大野にこう言った。
「浅野家はな」
「当家にとっては譜代ともいう家で」
「ついて欲しかったが」
「はい、しかし浅野家もです」
「今の流れには逆らえぬか」
「まずは家です」
これをどうして守るのか、大野は大名の家にとって最も重要な問題を秀頼に語った。
「家を守ることを考えますと」
「幕府につくこともじゃな」
「仕方ありませぬ」
それが現実だというのだ。
「やはり」
「そういうことじゃな、恨むことは筋違いであるな」
「そう言われますか」
「浅野家には浅野家の都合があるわ」
悲しい顔であるが達観してだ、秀頼は述べた。
「ならばな」
「浅野家は責めませぬか」
「余はな、しかし主馬は違うな」
「そちらの方への出陣が決まっていますが」
紀伊の方へのだ。
「あ奴は怒り狂っております」
「やはりな。主馬はお主とは違い血の気が多い」
「ですから」
「お主とのことも聞いておる」
秀頼も大野を襲ったのは治房の手の者だと思っている、だがそれは確かな証拠がないので彼も断を下さなかったのだ。
「あの者は余から見ても血の気が多い」
「はい、ですから」
「この度もじゃな」
「堺も幕府につきそうですし」
「堺も攻めてじゃな」
「そして浅野家もです」
この家もというのだ。
「怒りのまま攻めるかと」
「そうか、あちらには岡部大学と塙駄右衛門がおるな」
治房の下にはというのだ。
「二人に何もなければよいな」
「怒りのまま攻めて」
「怒れば我を忘れる」
秀頼もこのことはわかっていた、ここでは言わないが己の母をいつも見ていてそれで学んだのである。
「それで采配が乱れてな」
「大学と塙殿
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