第33話
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帝国との戦争も起きなかっただろうにと……」
「殿下……」
「ですが今年……僕は改めてトールズに入学しました。真に国家の礎たる人材を育成するため”生まれ変わった”本校に――――これでも首席で合格したんですよ?」
「それは……素晴らしいですね。両陛下やオリヴァルト殿下、リーゼロッテ殿下やアルフィンも鼻が高いでしょう。」
「―――いえ、まだまだです。もっともっと、”強く”ならなければ……僕の”弱さ”のせいで傷つく人をこれ以上出さないためにも……ああ、そうだ………そのためにも僕は………」
「………殿下……?」
決意を口にした後片手で頭を押さえて独り言を呟き始めたセドリック皇太子を不思議に思ったリィンは戸惑いの表情で声をかけたその時、我に返ったセドリック皇太子がリィンを見つめて驚愕の提案をした。
「――――ですから、リィンさん。次の特別演習が終わったら本校に移ってもらえませんか?」
「え………………」
「第U分校は悪くない環境ですがそれでも本校の”二軍”でしかない。今年の本校は、前途有望な候補生も多く、設備や教官陣も遥かに充実しています。若き英雄たる”灰色の騎士”が指導するならどちらが相応しいか……フフ、議論するまでもないでしょう?」
「…………――――それはできません。」
「………………え。」
自身の提案を聞いて少しの間考え込んだ後断りの答えを口にしたリィンの答えを聞いたセドリック皇太子は一瞬固まった後呆けた声を出した。
「自分には、新たな”Z組”を始め分校生全員を指導する役目があります。まだ着任して2ヵ月足らず……放り出すわけにはいきません。そしてこれは殿下もご存知と思いますが……自分はメンフィル帝国政府の指示によって、第U分校の教官の一人として派遣されています。その為、メンフィル帝国政府の許可もなくそのような事はできません。ですから……申し訳ありません。」
「っ………皇太子の頼みであっても、ですか?」
リィンの答えを聞いたセドリック皇太子は唇を噛みしめた後真剣な表情でリィンを見つめて問いかけた。
「……畏れながら、自分の忠誠は身元不明であった自分を重用し、”七日戦役”勃発時は山里である故郷の為にわざわざ正規軍や皇族の親衛隊に加えて皇族の方まで派遣して頂いた大恩あるリウイ前皇帝陛下やリフィア皇女殿下を始めとしたメンフィル皇家の方々です。そして自分の第U分校への派遣はメンフィル帝国政府を通したリウイ前皇帝陛下の指示です。例えユーゲント皇帝陛下の勅命であっても、第U分校の教官を辞めて本校の教官に就く事はできません。」
「………納得できませんね。」
リィンの説明を聞いたセドリック皇太子が不満げな表情で呟いたその時
「で、殿下……
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