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勇者にならない冒険者の物語 - ドラゴンクエスト10より -
始まりのジュレット10
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が両手を腰に肩を怒らせながら叫んだ。

「愚痴を言うのはまだ早いにゃ! 当番なんだからちゃんと監視するにゃ!」

「はいはい、わかったわかった。全く、もっと討伐しやすい魔物ならよかったのに」

「文句言わにゃい!」

「わかったよっ! 全く・・・。はぁ、バルジェンの奴は元気にしているだろうか・・・」

 チョウキがそうしてキャンピングドルボードの上で偵察しているのには理由があった。
 燃料タンクに亀裂が入っており、燃料のドルセリンが漏れていた為停車して修理出来ないかミシャンラが調べていたのだ。
 そもそも、ドルボードと言うのは何かと言うと、古のドワーフの国、古代ドルワーム王国で開発された古代技術で作られた乗り物である。
 ドワチャッカ大陸で、ある日しがない冒険者が偶然発掘した所、ガタラの町で古代ドルワーム王国の失われた技術の解析をしていたドワーフ族の女性研究者が熱意溢れる解析を行って結果、ドルボードの技術をどうにか再現したのが始まりだった。
 最初期型は発掘された個人用のドルボード、直径80センチの逆三角形の円盤に2本の操作レバーが突き出た浮遊して走る物の試験生産から始まったのだが、その個人用のドルボードの下部にある魔力でドルセリンを分解して推力を得る回転装置の大型化が試みられ、それが意外にも容易に生産出来てしまってからは一気に様々な形のドルボードが登場した。
 逆三角形に限らず、魔物の顔を模した個人用ドルボードを始め、女性に人気の月のブランコ型、子供に人気のモーモン8体に吊られるブランコ型、馬ロボット型、魔女の箒型、更には単輪タイヤ走行のバイク型が登場し、4輪走行の車型が開発されるまで実に数年という進化の速さだ。
 古代ドルワーム王国でも似たような大型ドルボードの記述があった為、開発スピードが異様に速かったと言われているが、それにしてもこれ程の技術を持っていたドルワーム王国が何故突然滅んでしまったのかは謎のままだった。
 ミシャンラもドワーフ族であり、工芸の心得がある事から樹液と大きな貝殻を砕いてすり潰した粉末を混ぜた即席モルタルを亀裂に塗り込んで燃料の漏れを修理しようと試みていたのだが・・・。
 ミエルが火球弾魔法のメラを超微小火力で出現させて、それを飛ばすのでは無く掌の上に維持させてモルタルの乾燥に使っている。
 乾き具合を隣で確認していたミシャンラが、ミエルの右肩に手を置いて言った。

「よし、白くなったわ。乾燥した証拠ね。もういいわよ」

「うん。お腹減った」

「はいはい頑張った頑張った。上手く行ったらご褒美にマナパスタあげるわね」

「わーい」

 あまり感情の篭っていない返事で嬉しさを表現するミエルを尻目に、ミシャンラはキャンピングドルボードの運転席に入って起動用のレバーを倒してみる。
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