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オーバーロード 狼牙
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ミになった人化の指輪。それをここに放り込んだ覚えがあるのだ。

「畏まりました!!」

モモンガさんを救えるという言葉にプレアデス達に気合が入る。途中から一般メイド、料理長、司書であるエルダーリッチ達、指示を終えた階層守護者達、その配下など人海戦術で探し続ける。

「ヴァイト様、もしかしてこれですか!!」

アウラがケースに入った赤と青の二重螺旋の指輪を見せてきた。ああ、たしかにこれだ。

「よく見つけたアウラ」

感極まってついつい抱きしめてしまったが、セクハラだったな。気付いてすぐに離れるが顔を真っ赤にしている。

「あとで何か褒美をやらないとな。楽しみに……」

「ヴァイト様?」

「危ない所だった。またミスをする所だった。デミウルゴス、シャルティア」

「「はっ」」

「二人でこの人化の指輪の実験を行って欲しい。オレもモモンガさんもリアルでは人間に近い種族だった。人化の指輪で本当に人間に近い物に成れるのか、特に味覚などの五感が正常に働くのかを調べよ。3日以内に調べて報告せよ。モモンガさんには知られるな」

「かしこまりました。必ずや役目を果たしてみせます」

「頼む。ただでさえ他の39人との別れで辛い思いをしているモモンガさんにせめて食べる喜び位は届けたいんだ。リアルでは食事というのは栄養補給でしかなかったから。不味ければまだマシというのが実情だ。何も感じないのがリアルでの食事だ。茶の一杯ですら気軽に飲めない。コーヒーという名の泥水以下の物を飲むのがやっとだった」

体が受け付けないような消毒の味と匂いを誤魔化すための更に不味いコーヒーもどき。子供の頃から飲むのはそれだ。苦いか、辛いか、何も感じない。たまに古い物を食べた時だけ感じるのもある。後から調べてそれがすっぱいというのが分かった。そんな終わった世界だった。

だから先程飲んだ紅茶の美味しさを表現することすら出来ない。感動し、それを共有したくて、頸部から紅茶を垂れ流すモモンガさんを見て凍りついてしまった。

だから、失敗は許されない。糠喜びは許されない。

「すべてを感じられなくても良い。ただほんの少しだけでも良いんだ。楽しみを与えて上げて欲しい。じゃないと、モモンガさんが変わってしまう。オーバーロードに飲み込まれる。絶望なんかの負の感情でモモンガさんは少しずつ変わってしまう。リソースの再分配はそういったデメリットを含んでいる」

「ならば我々の」

「デミウルゴス、ルプスレギナにも言ったが自分達のリソースを戻すようなことは決して許さない。大丈夫だ。負の感情を覚えさせないようにすればいいだけだ。これは我々に作られたお前達なら出来ると確信している。暗い案件や黒い案件はオレが全て受け持つ。それが死にそびれたオレの役目だ」

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