暁 〜小説投稿サイト〜
IS〜夢を追い求める者〜
最終章:夢を追い続けて
第70話「圧倒的。故に天才」
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えてもらった感じです、ね!」

 チェス自体は、実戦では何の役にも立たない。
 だが、“如何に状況を切り抜けるか”といった、戦略の柔軟性は鍛えられる。
 元々才能のない俺は、戦略の柔軟性も足りていなかったからな……。

「なるほど……なっ!」

     ギィイイン!

「といっても、分かっていたでしょう!?」

「まぁ、な!」

 渡り合う。押し負けない。防ぎ切り、躱し切る。
 かつての俺じゃ、到底考えられない攻防を、桜さんと繰り広げる。

「しかし、どうした?お得意のあの連撃は使わないのか?」

「生半可な攻撃では、相殺してくるでしょう?まぁ、楽しみにしててくださいよ……!」

 とは言うが、試してみる価値はあるだろう。
 ……まぁ、全身全霊の切り札ではないけどな。

「っ……ぜぁっ!!」

   ―――“ナインライブズ”

「こいつ、は……!」

     ギギギギギギギギギィイイン!!

「っづぁ……!!」

 けたたましい金属音が響き渡り、桜さんは大きく後退した。
 それだけじゃない。支障はないだろうが、腕に負担をかけさせたようだ。

「はぁっ!」

「っ!」

 追撃を放つ。だが、わかっていたことだ。
 あっさりと、それは躱される。

「ぜぁっ!」

「っ……!」

     ギィイン!!

 躱された所からの反撃を何とか防ぐ。
 すぐさま一度距離を取る。

「……さすがだな。今のは、驚いたぞ」

「防ぎきっておきながら、よく言いますね……!」

 正直、もう少し効くと思っていた。
 直撃は無理だとわかっていても、もっと後退させられると思っていた。

「だが、今のはあの連撃ではないな」

「当然です。あれは俺が切り札とするものじゃない。確かに、俺の持つ技の中でも上位に位置する技です。……が、あれで貴方を倒せるとは思っていない」

「……わかっていて、放ったのか?」

「倒せなくとも、効くとは思っていたので」

 少しでも桜さんの体力を削れるのなら、試さない理由はない。
 ……同時に、これでは倒すことはできないと、確信させられる。

「(俺が考えた技では、通じるのは努力を結集させた連撃の類だけ。他にあるとすれば、同じようにありとあらゆる“想い”を詰め込んだ一撃のみ……)」

 早すぎる故に斬撃が同時に見える。……それが俺の切り札となる技だ。
 桜さんと束さんを大いに驚かせ、俺の切り札となった技。
 それを放つタイミングは限られているし、容易ではない。
 ……だからこそ、確実に決めなければいけない。

「(それ以外は、全部それに繋げる“布石”にするしかない)」

 元々、俺は別に多才じゃない。
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