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SAO -Across the another world-
四話 不可視の世界
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り出すと、今日の早朝に栗原から受け取っていた、アスナと思われる人物が写った画像を表示させ、机の上に置いた。

「ん? どれどれ......」

菊岡は紙コップに淹れたコーヒーと緑茶を机の上に置き、デスクチェアに座りながらその画像を見た。約一分くらい見ていたであろうか。菊岡はスマートフォンの画面から目を放すと、牧田へと向き直った。

「んー....微妙ぅ、だね」

予想外の言葉が菊岡の口から飛び出した。微妙、とは何なのか。その言葉の真意を聞くため、牧田も口を開いた。

「微妙、とは何ですか?」

「決定的な証拠が無いんだよ。あくまでも似ているってだけでね。確か彼女はPN(プレイヤーネーム)[アスナ]、現実での名前は[結城明日奈]さんだっけか。確かに、彼女は未帰還者のカテゴリーに入っている。でも、この画像だけでDAISは動かせないね。多分、この証拠だけで渥美局長の許可を仰ぐだけでも一年は掛かる」

「ですが菊岡さん、今のところ唯一の手掛かりですよ.....! この機を逃したらもう....」

「早まるな、牧田三曹」

菊岡から階級呼びで呼ばれる事は滅多に無い。呼ばれた時は、大抵飽きられているか怒りをぶつけられているかのどちらかだ。今回の場合は怒りの方かもしれない。

「間違った情報で動いて、さらに酷い惨事を引き起こす事だってあるんだ。二十年前の[いそかぜ事件]が正にそうだ。今回の[S事案]は世界中の誰も触れた事の無い事件だ。慎重に行かなければ駄目だ」

「.....」
 
「我慢してくれ。これで未帰還者全員を亡くすような事になれば、VR産業はまたバッシングを受けて衰退してしまう。衰退させる訳にはいかないんだ」

「産業の為、ですか?」

「いや。人があってこその産業さ。それを為す為にも、今回は我慢してくれ。頼むよ」

「......分かりました」

不承不承ながらも頷き、牧田は菊岡の淹れた緑茶を手に取った。いただきます、と呟いて一口飲む。味は苦い。

「すいませんでした」

「なに、謝る事じゃない。その画像も重要な証拠だ。一応、参考にさせてもらう」

その言葉が菊岡の本心がどうかは分からない。慰めなのかもしれない。でも、その言葉にもすがり付きたい程、牧田は助けが欲しかった。この事態を1mmでも動かしてくれる、何らかの力が。

が、その願いは容易に崩れ去った。

「しかし、だ。冷静さを失った君は危険過ぎる。何をするのか分からない以上、DAISとしては君を放っておく訳にはいかないんだ」 
 
それは、救いなど無いという、菊岡の意思表示であり、そして、決別の言葉であった。

「牧田玲三等特曹。君に部隊員非承認処分(Disavowed)を下す」

その言葉に後ろで成り行き
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