暁 〜小説投稿サイト〜
SAO -Across the another world-
ACT.1 The another "Fairy Dance"
一話 労働者の背信
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。数ヶ月前に終結し、述べ四千人の犠牲者を出したとある事件は、それを体現していた。

仮想世界での自分のアバターのHPが0になった瞬間、現実世界の自分は脳をマイクロウェーブで焼かれて死ぬ、という狂気の事件。被害者約一万人の中で、生き残ったのは僅か六千人。死亡率は四十パーセントを越えている。これは第二次世界大戦の日本軍の死亡率である二十数パーセントよりも遥かに高い。それもたった二年の期間でだ。

その事件を起こした狂気の天才は長野の山荘で自殺したと聞いているが、あの人物が逃げもせずに自殺するはずが無い。もしかしたら今頃、電脳空間にでも居るんじゃないかな.....と私は勝手に想像していた。まぁ、今の技術では脳のスキャニングの成功率は一パーセント未満の数字なので、もし仮に電脳空間へ行こうと脳にスキャニングを掛けたとしても、成功はしなかったと思う。

そんな思いを巡らせながら、会社から最寄りの駅から電車に乗り、都営新宿線、山手線を乗り継いで御徒町にある友人が経営する行き付けのバーへと向かった。


東京都・台東区御徒町の裏路地に存在するあるバーの目の前に、園原は立っていた。現在時刻は午後六時過ぎ。強制的に残業しなければならないのがデフォルト勤務の私にとって、こんな早い時間に訪れた事は一度も無い。古びた木製のドアを引くと、入り口のベルが使い込まれた感のある重圧な音を鳴り響かせた。

「いらっしゃいませ」

野太く、そして何処か日本人離れをしたところがある声に迎えられ、店内へと歩を進めていく。シックな基調の店内には自分達以外には誰も居らず、店の一角にある年代物のレコードが流すジャズがひとりでに響いていた。

私はカウンターの向こうに人影を見つけると、そこへ向かって声を掛けた。

「久しぶり、アンドリューさん」

カウンターの向こう側でグラスを丁寧に磨いている外国人のマスターに一言挨拶をし、カウンターの手前にある革張りのスツールへと腰掛けた。

マスターの名前はアンドリュー・ギルバート・ミルズ。アフリカ系アメリカ人の大柄な人物であるが、中身は葛飾区で生まれ育った生粋の江戸っ子である。彼は私の親友の夫であり、私が週末の仕事終わりに良く通うバーのマスターであった。彼はとある事件に巻き込まれたせいで二年近く、この店を去っていたが、最近マスターに復帰していた。

「久しぶりだな、歩美ちゃん」  

「あれ? あかりは?」

あかりとは、彼の妻である私の親友だ。名字は戸塚である。中国地方の田舎出身だという彼女とは大学生の時に知り合い、同じ田舎出身として仲良く一緒にくっついていた。卒業後は数年一般企業で働き、アンドリューと結婚した現在は夫と共にこの「ダイシー・カフェ」でマスターとして勤務している。

「あいつなら今上で寝てるよ。
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