暁 〜小説投稿サイト〜
SAO -Across the another world-
ACT.1 The another "Fairy Dance"
一話 労働者の背信
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東京都・千代田区 [05:30]
園原歩美・株式会社レクト・第二研究室所属
日本が世界に誇る大都市、東京都の夜明けは早い。
政治、経済、物流等、あらゆる産業が集中した日本の心臓部である東京都。そのあちらこちらに網目のような線路を引き、田舎者から見れば信じられない発車間隔で各地を走り回っている列車には、始発から数えきれない程の乗客が乗っていた。
その満員列車が三分おきに駅に到着し、毎回大勢の人々が乗車して走っていると思うと、本当にこの日本という国は首都に人口が集中しているな、と私は思った。それを人々は一極集中等と揶揄するが、個人的には別に一極集中してようが各地に分散していようが、上流階級とは無縁の生活を送っている者にとってはどうでも良い話であった。
寒さが十二月から尾を引いて残る二月。街を行く人々はコートやマフラー等の防寒具を身に付け、身に染みる寒さを防いでいる。かくいう私自身も、仕事着であるパンツスーツの上にステンカラーコートを着て寒さを防ごうとしている。が、寒気は生地を通り越して肌に伝わってくる程に強力であった。もう少し時間が経てば、日が出てきて暖かくなるであろうから、それまでの辛抱だと自分に言い聞かせ、首元の寒気を遮るようにコートの襟部分を合わせ、手で抑えた。
元々自身が九州南部の、温暖な地域で生まれ育った者だからかは知らないが、上京して六年が経っても未だにこの寒さには慣れない。そもそもビルが乱立し、地上地下問わず列車が縦横無尽に駆け回っている都会にすら慣れはしていない。都心の大学に通う為、初めて上京した時は、電車を使って上野に行くつもりが、何故か遠く離れた秩父市へ辿り着いていたりしたものだから、それ以降怖くて公共交通機関は使っていない。だから通勤も列車やバスを使わず、三十分近く掛かる職場まで歩いて出勤していた。電車もバスも無縁であった田舎出身の田舎者にとっては、自分の足こそが一番信用できる移動手段であった。
大学時代から入居している、家賃が安いだけが取り柄のアパートから出て、歩道の脇に植えられて丁寧に世話されている街路樹を数百本数える頃には、もう私の勤め先である高層ビルが見えてくる。東京のコンクリートジャングル化の一角を担っていると言っても過言ではない程、その建物は大きく、そして高い。その高層ビルの表面はすべてガラス張りであり、そこからフロアの様子や稼働するエレベーターが見える様になっていた。広大な敷地内に立つ他の建物も、ガラスを装飾のメインに使用していて、とても電子機器メーカーの社屋だとは思えない。このビル近隣に住む都民からの公募によって付けられた渾名が「クリスタルパレス」というのも納得できる程、その威容は美しく、ある種の神々しさすら感じられた。
歩道の黒いアスファルトの地面からレンガ調の石
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