閑話2 ある姉妹のいさかい(後編)
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信じられなかった。
色々なしがらみがあっても、更識家の中で、姉と私だけは太郎にいの味方だと思っていたから。
「なんで、太郎にいに、あんな事をしたの!」
姉も太郎にいを好いているのは知っている。でも、何故、今?
姉だって、彼が今、どれほどボロボロか知っているはず。
いや、当主の姉ならば、太郎にいがあのような状態になった理由を私より詳細まで知っているだろう。
なのに、あえて太郎にいが満足に動けない今を狙って動く意味は何?
私はそれが、断れない状況で政略結婚を強要する、卑怯な真似にしか見えなかった。
血相を変えて詰め寄る私。
その私に、姉は何の感情も込めない言葉で返した。
「必要だからよ」
あの日から、私は姉と口をきかなくなった。
翌々日、太郎にいの了承をもって、私と姉と、太郎にいの結婚は書類上、成立した。
後々、少子高齢化社会にかこつけて、一夫多妻を認める法案を出す、と親から説明を受けたが、便宜上、山田太郎と二人の婚姻を成立させるため、私は日本の戸籍で婚姻し『山田 簪』に、姉は当時安全保障関連で縁の深かったロシアで二人分の戸籍を取得。太郎にいを入婿という形にして、名前を変えずに婚姻を成立させた。
私の夢は、歪んだ形で叶えられた。
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手続きを全て終わらせた後、姉妹の婚姻が成立した後に、太郎にいは一つだけ条件を出した。
横浜のとあるホテルの式場。
私の手を取る父と共に、ウェディングドレスを着た私は、ヴァージンロードを歩く。
向かう先には神父と太郎にいが。
『俺は構わないが、女性にとって結婚式は特別だ。せめて彼女達の好む場所でウェディングはやらせてくれ』
私たちの為に願ってくれた。太郎にいのお願い。
その願いに嬉しさと申し訳なさを感じながら、私は彼と共に神父の言葉を聞く。
分かる人には分かるかもしれないが、神父の言葉に結婚時点で背いていることに苦笑しながら、二人でその祝福の言葉に耳を傾ける。
最後の誓いの言葉と共に太郎にいは優しく私のヴェールを上げる。
そして、その手が優しく私の顔に触れた。
合わせて近づく私。
私たちの唇は徐々に近づき、やがて、ゼロになった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
それから、色々な事があった。
太郎にいのご両親に、私と両親と挨拶に行ったり(太郎にいは殴られてた)
その後、様々な事情により、血の繋がらない娘と息子ができたり。
正直、太郎にいへの幻想が粉微塵なった部分もある。
だが、一つだけ確かな事は、今でも私は太郎にいの、いや太郎の事を愛していて。
そして、あの日の姉の言葉が、トゲのように心に刺さっている、という
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