第1部
アリアハン〜誘いの洞窟
ナジミの塔
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私もシーラの後を追う。さらにその後ろから、大きなため息をついたユウリがついてきた。
そしてその奥には、なぜかベッドがたくさん並んだ大きな部屋があった。
「いらっしゃいませ、お泊りですか?」
「は?」
私は自分でも情けないほど間抜けな声を上げた。だって、盗賊の棲みかなのに、ちゃんとした宿屋があるんだもの。
「おいじじい。ここに『盗賊の鍵』があると聞いたのだが、お前が持ってるのか?」
宿屋のおじさんを目にしたとたん、ユウリはいきなりおじさんの胸倉をつかんで脅し始めた。顔はいつもの仏頂面だから余計怖い。
「い、いや、わたしはそんなもの知らない!!」
「本当か? 隠すとためにならんぞ!?」
もう完全に勇者じゃないよ、その言動。
「本当ですって!! わたしはただの宿屋の主人ですから!! ここの家の人に雇われてここに店を作ってるだけなんですからね!」
「なんでこんなところに宿屋があるんですか?」
私の質問に、宿屋のおじさんは得意げな顔で答えた。
「君たち、洞窟を抜けてきたんだろう? 魔物に襲われなかったかい?」
「襲われましたけど……?」
「あの洞窟は別名『冒険者の修行場』と呼ばれていてね。魔物を倒すのに不慣れな新人の冒険者たちがちょくちょく腕試しにやってくるんだよ。けどやっぱり腕が未熟だからね、こうして休憩所を作っているのさ。いいアイデアだろ」
「は、はあ……」
私が微妙な反応を返していると、今のやり取りをまったく無視した様子でユウリが尋ねた。
「ここの家の人に雇われた、だと?!」
「ええ。この塔には昔から住んでるご老人がおりまして、なんでも今は孫と二人で暮らしているそうですよ」
「孫!? 孫までいるの!?」
私はさらに驚愕した。一人だと思っていただけに、孫までいると言う衝撃は半端ないものだった。
「どうやら、ただの塔じゃなさそうだな」
そういって、ぱっとおじさんの襟元を離すユウリ。おじさんは心底安堵した様子で襟元を正している。
「よし、上に行くぞ」
私たちの返事も聞かないまま、ユウリは宿屋のおじさんに背を向けて歩き始めた。
私は宿屋のおじさんに頭を下げながら、勝手にベッドでごろごろ転がっているシーラを引っ張って、ユウリの後を追った。
その後宿屋を後にした私たちは、おじさんの雇い主でもあるおじいさんとその孫がいるという手がかりをもとに、ナジミの塔を徹底攻略することにした。
2階に上がり、一通り調べるため二手に分かれることにした。ユウリ一人と私とシーラの二人でだ。
シーラと一緒に入り組んだ通路を進んでいると、やがていきどまりの壁が見えた。
道を間違えたかと思い引き返そうとしたが、ふと壁の下に目をやると、金色に輝く宝箱がひっそりと置いてあった。
「こ、これって宝箱だよね!?
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