第五章
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「そのうちいらないものって言われるかもね、足の裏の毛は」
「私達のそれは」
「身体の毛だってそうだよね」
彼は胸や脛の毛の話もした。
「服を着てるとね」
「あまりね」
「いらないからね。多分昔はね」
このことはオルボルグは知らないがだ。
「服が今より生地が薄かったりなかった時代はね」
「私達もっと毛深かったのかしら」
「そうかもね、だから僕達も靴を履いて」
ホビット達がそうなってだ。
「足の裏の毛が薄くなって」
「それで何時かは」
「いらないものってなるかもね」
「私が前に言ったみたいに」
「そうなるかもね」
こう遠くを見る目で話した。
「本当に」
「そうなのね」
「靴を履いたらそんなにいらないのは確かだし」
「だから薄くなったし」
「それならね、何時かはね」
ホビット達が代を重ねればというのだ、靴を履く様になって。
「僕達の足の裏の毛はね」
「いらないものって思われる」
「そうかも知れないね」
こう妻に言うのだった、そして。
オルボルグはここでふと自分の顎を当てた、そのうえで妻に笑って話した。
「そういえばホビットは髭が薄いね」
「人間の黄色いお肌の人達よりもね」
「うん、薄いね」
「髭が濃いホビットの人ってね」
「まずいないよね」
「そうよね」
ボアーンも夫の言葉に頷く。
「私達は特に寒い場所にいないせいかしらね」
「ホビットはね」
「だからお髭もね」
「濃くないのかな」
「身体の毛もね」
胸や脛のそちらもだ。
「そうかも知れないわね」
「じゃあ靴を履いてね」
「足の裏の毛もね」
「本当に薄くなって」
「何時かはね」
いらないものとして言われるのではないかと思うオルボルグだった、その話をしてからだった。妻は夫にこう言った。
「ところでさっきお店の裏にドンナーさんが来て」
「どうしたんだい?」
「羊一匹捌いて欲しいって言ってるわ」
「羊かい」
「ええ、大人の雄のね」
その羊をというのだ。
「そう注文受けたの」
「それは大仕事だね、それじゃあ」
「あなたがやるのね」
「そんな大仕事ならね」
大人の羊を捌く位ならとだ、オルボルグは肉屋として妻に応えた。
「是非やるよ」
「それじゃあお店は私が番をするから」
「うん、すぐにかかるよ」
「もう羊は持って来てくれてるから」
「お店の裏にだね」
「心臓握ってね」
そうして死なせてというのだ、羊の胸のところを切ってそこに手を入れて心臓を掴んで死なせる遊牧民族のやり方だ。
「そうしたから」
「じゃあすぐにね」
「捌いてね」
「そうさせてもらうよ」
こう応えてだった、オルボルグはすぐに店の裏に向かった。靴を履いてのその足取りは実に軽いものだった。
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